2012年07月24日
富士フィルム、有機EL特許売却の背景と今後
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:富士フイルム

富士フィルムは24日、約1200件に及ぶ有機EL関連の内外特許をまとめて米ユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーション(UDC)に1億500万ドル(約82億円)で売却すると発表したが、背景には有機ELの開発をめぐる、国際間の激しい競争「特許戦争」が絡んでいるようだ。

富士フィルムによると、各国企業間で有機ELをめぐって取得している特許の数はもの凄く多く、「今後製品化していく上でこのように複雑に絡んだ特許問題をクリアしていくのは容易ではない。1企業の力では、自由に商品開発していくことは難しい」との判断がまずあったようだ。

このため、ライセンスビジネスをほぼ専業とするUDCに関連特許をまとめて売却することにした。

UDCは、資本金365百万ドル、2011年度の売上高60百万ドルで、企業規模としては中堅だが、有機EL分野ではライセンス・ビジネスの世界のリーダー的存在として知られている。

各国の有力企業から特許やノウハウを買い集め、ライセンスすることで、「交通整理」の役割も果たしているようだ。こうして、これまでにサムスン、LD、ソニー、パナソニックなどにライセンスしてきた実績を持つ。

一方、富士フィルムは大量の特許を譲渡はしたが、有機EL事業から「手を引く」わけではない。

今後、有機EL市場の発展とともに材料となる透明性フィルムや透明導電性フィルムの需要が増大していくことは間違いない。このためUDCとは戦略的関係を深め、UDCの顧客を取り込んで、世界の有機ELメーカー向けにこれらフィルムなどの高機能材料を供給していく考えだ。