2012年08月03日 |
日化協、政府の「エネルギー選択肢」に“問題点”指摘 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:日本化学工業協会 |
日本化学工業協会(会長:高橋恭平・昭和電工会長)は3日、「政府が検討しているエネルギー・環境に関する選択肢には“国際競争力の喪失など問題点が多い」とする意見をまとめ発表した。 この中で、「限定された選択肢の中から選ぶとすれば、20-25シナリオとなるが、いずれの場合でも電力コストの大幅上昇により、化学産業の成長性と国際競争力を毀損する」と強調。さらに「シナリオの確実性が明示されていない」、「国民生活に不可欠な化学品供給に支障をきたす」などと問題点を指摘している。 日化協は発表した「意見」は、要旨以下の通り。 「今回提示された3つのシナリオは、国民生活に密接に関わる化学産業にとって、国際競争力の喪失を招き地球温暖化対策への貢献の観点からも大きな問題を持つ。また、シナリオの確実性が明示されておらず、リスク対策も不明であり見直すべき点が多い。ただ限定された3つの選択肢から選ぶなら、エネルギーに多様性がある20-25シナリオとなる」。 【生産、雇用への影響】 化学産業の電力消費量は、約310億kWh(2010年)。20-25シナリオを導入した場合、年間1,700億円のコスト増となる。日本の化学産業はすでに世界最高水準のエネルギー効率を達成している。これ以上の過度な省エネ目標の設定は、産業の存立を危うくする。 電力コストの負担増や過度の省エネ投資を強いることは、産業のコスト競争力を失わせ、国内生産の維持が困難となる。化学産業の海外生産比率はすでに2000年の12%から、2010年には17%へと上昇しているが、今回のシナリオは、海外生産シフトを更に加速させるだろう。 【地球温暖化問題解決への貢献】 化学産業は、「LEDや有機ELによる照明の高効率化」「リチウムイオン電池」「太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー」分野などへ先端材料を供給している。過大なコスト負担は、かえって地球温暖化問題への貢献を阻害し、省エネや再生可能エネルギーの導入拡大に影響を及ぼす。 【省エネルギー、再生可能エネルギー導入の実現可能性】 2030年の最終エネルギー消費は、原油換算で3.0億~ 3.1億kLと、2010年の3.9億kLから約2割削減するとなっている。この省エネ目標を達成するには革新的省エネ技術の開発導入が必要となる。だが、その点に不確実な要素が多い。実現の可能性については、技術開発・経済性・社会的適応性から厳密に判断しなければならない。 国全体のシナリオとしては、家庭、業務、運輸も含めて、各部門で実現の裏付けに基づいた、確度・可能性を考慮した省エネルギー目標が必要だ。例えば、再生可能エネルギー比率を、現状の10%から30%に高めるには、太陽光パネルを1,000万戸に導入する必要がる。また、風力発電設備も現状の30カ所から、さらに420カ所増やす必要がある。実現性について再検証する必要がある。 また、今回提示された3つのシナリオのいずれの場合でも、万一の電力不足に備えて火力や原子力を準備しておく必要がある。リスク対策として、効率的で安全性の高い火力や原子力発電に十分な技術と能力を確保しておくことが必要だ。 ニュースリリース参照 http://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1343972353.docx |