2001年01月01日
【年頭所感】国際競争力を確保し石化産業復権を ・石油化学工業協会会長 大橋光夫
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:住友化学、三井化学、石油化学工業協会

 謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、21世紀を迎えての所感を申し上げたいと思います。

 20世紀最後となった昨年の日本の石油化学産業を振り返ってみますと、数量的には比較的恵まれた環境ではありましたが、収益的には厳しい局面に立たされた一年間であったと思います。
 国内需要は、IT産業を中心とした全般的な景気の回復を受けて、一昨年に続き、順調に伸長してまいりました。
 また、輸出も米国経済が堅調であったこと、アジア経済も回復軌道に乗ったことから中国をはじめアジア地域の需要が旺盛であり、前半は高い水準で推移しました。しかし、後半の第4四半期に入ってからは、米国経済の翳りがアジア市場にも影響を及ぼし、輸出は低迷致しました。
 結果、昨年のエチレン生産量は、史上最高であった一昨年の769万トンを下回るものと予想されます。

 このように、エチレンをはじめ各製品とも、年間を通して概ね高稼働を維持できましたが、一方、第3四半期以降は原油価格が一段と急騰し、その影響でナフサ価格が高騰したため、各企業独自の判断で販売価格の是正に取り組みましたが、必ずしも満足のいく成果を得られず、収益的には大幅な減益もしくは赤字を余儀なくされる事態となりました。
 このように、昨年は恵まれた需要環境にも拘わらず、収益水準が低いということは、日本の石油化学産業の収益体質が未だ脆弱であると認識せざるを得ません。21世紀に大きな課題を残す結果となりました。

 今年につきましては、国内需要は、引き続き微増で推移するものと予想されますが、輸出は、アジア地域・中東での新設プラントの稼動により、一時的な供給過剰が懸念され、またアジア経済の一服感から大幅に減少するものと思われます。
 このような見通しから、エチレン生産量は、更に昨年を割り込むことは覚悟せざるを得ず、低稼働下での収益確保策を講じることが各企業の喫緊の課題になるものと思われます。

 近年、合併やM&Aで巨大化した欧米企業によるアジア地域での拠点化、優位な原料を武器にした中東での大規模プラントの新設、更には現地資本の台頭と、企業間における国際的な競争はますます熾烈を極め、21世紀初頭には優勝劣敗が明白になってくるものと思われます。

 グローバルな事業規模への拡大による国際競争力の確保が潮流となっており、合併やM&A等による再編が有力な選択肢となっておりますが、他方では、磨かれた技術力により、特色ある製品で国際競争力を確保することも選択肢の一つであると思います。

 昨年公表されました「住友化学と三井化学の経営統合」は正に、日本の石油化学産業にとって象徴的な出来事であり、世界における日本の石油化学産業のプレゼンスを高めるものと確信しており、グローバルリーダーとしての発展を期待しております。
また、国内における第二、第三の再編の契機になることも期待されます。

 以上に述べましたことは、個々の企業の経営判断に帰する課題でありますが、当協会としての役割は、国際競争力を確保することにより、21世紀における日本の石油化学産業の復権を果たすために、以下に述べる事項を推進してまいりたいと思います。

 まず、石油化学産業を取り巻く社会制度の改革要望に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 設備保全、物流関連等の規制緩和、特に税制改正は石油化学産業のみならず、日本全体の産業空洞化を回避するための政策課題として最重要であると考えています。

 次に、アジア経済の台頭により、日本のリーダーシップが失われつつあることから、例年開催の「アジア石油化学工業会儀(APIC)」等を通じて、アジア各国との対話を深めることを積極的に推進してまいりたいと考えております。

 また、時代の経過とともに、存在意義が変化してきた業界団体の統廃合や、21世紀における重要な社会テーマとなる循環型社会の構築、地球環境問題等は避けて通れない課題であります。特にCO2排出問題は石油化学産業との係わりが大きく、こういった問題に対し、関連業界との連携のもと積極的に取り組んで行きたいと考えております。

 今後とも、当協会の会員各社の協力を得ながら、また関連省庁、関連諸団体、報道関係の方々のご協力、ご支援を賜りつつ、日本の石油化学産業発展のために尽力してまいりたいと考えております。
 皆様方のご健勝、ご多幸を祈念申し上げて、年頭の挨拶と致します。