2000年11月21日
DIC、2000年9月中間期連結売上高は5%増の4,900億円
為替の影響大/コーツ買収効果は期待以上も米KPG業績悪化で相殺
【カテゴリー】:人事/決算
【関連企業・団体】:大日本インキ化学工業

 大日本インキ化学工業(DIC)の2000年9月中間期の連結業績は、売上高が前年同期比5.3%増の4,899億7,500万円、営業利益は10.2%増の237億5,900万円、経常利益は5,9%増の106億1,500万円となったものの、当期純利益は36億3,700万円と22.4%減少した。ユーロ安を始めとした為替、また海外子会社の業績悪化が大きく影響した。
 2000年9月の中間決算(連結)では、為替要因を除くと売上高は9.3%の増、営業利益も18.6%増となる計算で、今回の業績に対する為替の影響の大きさがうかがえる。営業外収支では、米国の関連会社KPG(コダック・ポリクローム・グラフィックス)の業績が大幅に悪化したことにより持分法損益が30億円の損失となった一方で、金融収支は資金調達方法の変更により実質金利の低下、さらに円高による為替の影響もあり23億円改善した。また経常利益も為替要因を除くと14.5%の増益となる。今回の中間期では、退職給付会計の適用による会計基準変更時差異が111億円発生、これを特別損失として一括償却したが、これに関連して年金資産の積立不足充当のため退職給付信託を設定、信託設定益58億円を特別利益に計上した。さらに国内で、樹脂工場跡地の一部売却など固定資産売却益30億円も特別利益に計上、これらにより当期純利益は22.4%の減益となった。
 部門別に売上高を見ると、グラフィック事業部門は19.4%の増収で、日本は減収となったものの、米州、欧州は、コーツ買収効果が大きく、米州は13.6%増のうち7.7%、欧州は48.9%増のうち48.1%がコーツの増収によるものとなっている。ポリマ関連部門は7.4%増収で、日本はIT関連需要の伸長や出光石油化学とのPS(ポリスチレン)のアライアンス効果、エポキシ樹脂の需要増により8.2%増、米州はライヒホールドの塗料樹脂、エマルジョンなどが好調で9.6%増、欧州は為替の影響が大きく3.2%の減収となった。また高分子機能材部門はボトル用PET樹脂事業の縮小、PPS(ポリフェニレンサルファイド)の好調などによりトータル3.1%の増収、その他部門も0.6%の増収となった。
 通期の連結業績見通しについて、売上高は国内では引き続き堅調に推移、海外ではグラフィック部門はコーツ買収効果のさらなる発現もあって当初予想通り順調に推移、ポリマ関連事業は米州では前年を上回る見通しであるものの、欧州はドル高ユーロ安の状況が続くとして若干の減少を見込んでおり、トータルでは9,900億円と前年同期比5.4%増となる見通し。また経常利益は、内外とも売上高の増加により増益を見込んでいるが、さらに日本で事業構造改革の効果を期待する一方、海外の合成樹脂事業は原料費アップによる利益率の低下が予想される。またKPGの業績は依然として厳しくリストラ費用が増加、持分法損益が悪化する見込みで、これらの結果経常利益は28.4%増の250億円となる見通し。最後に当期純利益は150億円と前期に対し黒字化する見通し。
 21日に開催した中間決算説明会において、同社の奥村晃三社長は、「全般的に数量は回復したが、地域や品目、あるいは業界によりばらつきが出ている。また、昨今の原油、ナフサをはじめとした原料の高騰が収益の圧迫要因になっている。また、当社は海外のウエイトが50%以上になっており為替の影響も大きかった。ただし、IT関連や環境対応製品が伸びてきている。また期待以上にコーツの買収効果が出ており、業績に貢献している」と、中間期の業績を概観した。さらに今後の課題として、(1)コア事業においてグローバルな事業展開を通じてコスト優位性を高めるため、購買や生産体制を整えるとともに、研究開発をスパイラルな形で成長できるよう整備しシナジー効果を高める、(2)投下資本の効率化として、他社とのアライアンスも視野に入れた事業の効率化の実現、(3)緊急課題としてKPGの事業債構築やライヒホールドの業績改善などを挙げ、特に(2)については、現在策定中の中期計画「ドラゴン21」に盛り込み、引き続き厳しい環境の中でより強固な基盤の構築に取り組んでいく考えを明らかにした。