2014年02月07日
三井化学の「大型3事業再構築策」まとめ
鹿島工場閉鎖、千葉フェーノールも停止
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三井化学
田中稔一社長

三井化学の田中稔一社長は6日、2013年度の決算見通しと、大型市況製品「フェノール」「PTA」「ウレタン原料」3事業の再構築策を発表した。鹿島工場の閉鎖(ウレタン)や市原のビスフェノールA停止、出光興産と合弁の千葉フェノールのフェノールプラント停止など、大胆で厳しい内容となった。
田中社長は「中国などでの無秩序な新規参入・新増設により、市況が大きく崩れた。今後は競争力のあるプラントを残し“地産地消”主義で早期のV字回復をめざす」と力を込めた。2013年度は230億円の純損失が生じるが、今回の再構築策によって、“市況の改善”に頼らず、140億円の営業利益を生み出す方針だ。以下、再構築への取り組みをまとめてみた。

■ウレタン事業
(現状)
・TDI :大牟田工場は競争力があるが、鹿島TDIは劣位にある。
・MDI :大牟田MDIは小規模で劣位。韓国は競争力がある。
<再構築>
(1)鹿島:TDIを含む全プラント停止、工場閉鎖(2016年12月末めど)
・TDI(11万7000トン/年) :他社からの調達等により既存顧客への安定供給を図る。
・特殊イソシアネート群(2400トン/年) :大牟田工場で新設大型化。
・有機酸(無水マレイン酸3.2万トン、フマル酸1.5万トン) :事業終了。
(2)大牟田:MDIプラント(6万トン/年)停止(2016年12月末めど)

◇韓国のMDI、インドのバイオポリオール(15年1月)、中東プロジェクト(TDI、MDI)はいずれも順調に進行中。
◇大牟田には特殊イソシアネートXDI大型プラント(年産5,000トン)を新設する(15年10月稼動予定)。メガネレンズモノマーの原料だがソーラーパネルバックシート、食品包装接着剤などの分野にも市場展開が期待される。

■フェノール事業
(現状)
・中国の新規参入・増設による供給過剰や、国内需要の低迷、原料ベンゼン価格の高騰などといった大きな混乱状態からは脱しつつあり16~17年にかけて改善に向かうとみられる。
・日本国内は30万トンの供給過剰状態にある。
・中国向け輸出は大幅赤字となり今後も無理な情勢(6%のアンチダンピング課税、高い輸送コストなど)
<再構築>
(1)市原BPA(9万トン/年)停止(1年3月末)
(2)千葉フェノール(CHH社)のフェノール(25万トン/年)停止(14年9月末)
(3)用役コストダウン :電力源をLNGから石炭に切り替える。
(4)BPA1基(7万トン)を停止。中国向け輸出をゼロとし、ASEAN域内での販売体制を確立する。

◇中国ではSinopecと合弁の新拠点(25万トン)が14年5月稼動入りする。
三井化学の技術と安価な原料価格、Sinopcが有する強力な販売網を生かし、直ちに黒字化の見込み。

■PTA
(現状)
・中国では13年以降大幅な供給過剰(約1500万トンの過剰)状態となり、当面解消が期待できない。
・アジア全域でも余剰バランスとなり、当面ギャップは埋まりそうにない。
・三井化学は日本、タイ、インドネシアに生産拠点をもつ、世界第2位、アジア最大のPTAメーカー。

<再構築>
(1)インドネシア合弁会社を売却 :1995年に設立した「PT.Amoko Mitsui PTA Indonesia」の全株式をBP社に売却し事業撤退する。 現在の資本構成はBP50%、三井化学45%、三井物産5%。株式譲渡は14年3月の予定。
(2)タイ :酢酸原単位など合理化の進捗で世界トップクラスの競争力を維持する。中国向け輸出停止に伴い、3プラント(計144万トン)中の1プラントを休止。誘導品PETと連携した地産地消体制を構築する。また「ニソンプロジェクト」(ベトナム)の強みを生かし、安価な原料から誘導品までの一貫アライアンスを推進する。