2000年11月15日
スチレン系透明樹脂、スケルトンブーム沈静化で需給緩む
今後はブーム後に残る需要の見極めが肝要
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:なし

 PS(ポリスチレン)やABS樹脂の透明グレード、いわゆるスチレン系透明樹脂は、これまでコンピューター周辺機器を中心としたスケルトンブームを追い風に、急速に需要が拡大、この1~2年は極めてタイトバランスで推移してきたが、ここに来てブームがやや沈静化、需給が緩みつつある
 アップル・コンピュータ社のディスプレイ一体型パソコンiMACをきっかけに盛り上がったスケルトンブームは、その後コパソコン周辺機器に拡大、いまでは日用品や雑貨、玩具まで広がっている。一方、採用される樹脂も当初のPC(ポリカーボネート)から、透明ABS樹脂や透明HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)に移り、特にABS樹脂が使われるようになってから需要が急速に伸びていった。
 透明ABS樹脂や透明HIPSを生産するメーカーの多くは、透明樹脂の重合には時間がかかること、またバッチ式設備で生産していることから、たとえ需要が拡大していても無理な増産を行うと他のグレードの生産に与える影響が大きいため、大幅な増産は難しいのが実情。その反面中国を中心としたユーザーは、「オフスペック品でも良いから欲しい」など、猛烈な引き合いがあり、需給は極端にタイトな状態で推移してきた。アジア市況もトン当たり2,200~2,300ドルと、汎用グレードの1.5~2倍のレベルで推移し、今年7月末には2,500~2,600ドルまで上昇、その後もクリスマス商戦に向けさらなる需要の増加が見込まれていた。
 透明樹脂は日本のメーカーを中心に生産されているが、先に述べた理由に加え、「現在の状況はあくまでもブーム。ブームが過ぎ去った後が怖い」として、増産には慎重であったがここに来て数社が相次いで増産体制を整えている。さらに透明ABS樹脂では、台湾・奇美実業が今春から新規参入、10月半ばから年産3万トン規模で生産を開始している。
 ただし、現在の透明ABS樹脂の市況は、2,300ドル前後の推移となっている。大手商社筋によると、「これまで中国のユーザーは、とにかく欲しい、の一点張りであったが、最近はまず価格を聞いてくるようになっており、加熱状態を脱してやや冷静な目で見るようになってきた」としている。また日本のメーカーも、これまでは国内需要への対応だけで手一杯の状況であったが、少しづつ輸出を検討しつつある。まだスケルトンブームは去っていないが、沈静化しつつあるのも事実であり、今後はメーカー側もブームが過ぎた後に残る需要を見極めていくことが重要となりそうだ。