2000年11月06日
ブレーク博士、ファクター10で講演
持続可能な経済に果たす塩ビの役割の大きさを強調
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:塩ビ工業・環境協会

 塩ビ工業・環境協会は2日、仏「ファクター10研究所」所長のエフ・シュミット・ブレーク博士を招いて東京・千代田区のお茶の水スクエアで「化学工業におけるファクター10の具体化に向けて」と題する講演会を開いた。
 ブレーク博士は、OECDの科学局長やドイツ環境庁の特別顧問などの要職を歴任してきた中で、持続可能な経済社会の実現には天然資源の利用効率を10倍に高めることが不可欠とする独特の概念「ファクター10」を確立、合わせて、サービス単位当たりの物質投入量を表す尺度「MIPS」も開発し、世界各国の経済ならびに環境学者の間に大きなインパクトを与えた。現在は、同研究所の所長として国際社会を舞台に「ファクター10」の概念の普及とその実践の促進に精力的に活動している。
 2日の講演では、「現在は貴重な天然資源のかなりの部分がむだ使いされており、このままいくと地球があと2つ必要になる」と指摘、そして「持続可能な経済社会の確立には天然資源のフローを現在の10分の1に減らすこと、すなわち資源の活用の効率を現在の10倍に引き上げることがどうしても必要」と説き、継いで「そうした中で重要な役割を持つ素材の1つが塩ビであり、したがってその活用の仕組みを世の中全体がよく考えていくべき」と強く主張して多くの聴衆から盛んな拍手を浴びた。同博士の講演要旨は次ぎの通り。
1、これまでは、経済の資源はもっぱら資本と労働力と言われてきたが、真に貴重な資源は天然資源にほかならない。ポイントは、その活用に当たってエネルギー消費をいかに抑えていくかにある。
2、現在は天然資源の多くを浪費している。車1台作るのに車体1トン当たり30トンもの天然資源を使っているのが実情だ。こうした資源浪費型の経済の仕組みを改めることなく全ての発展途上国が経済水準をOECD諸国並みのところまで引き上げようとすれば、地球があと2つ必要になる。つまり、人類はすでに深刻な資源不足に直面しているわけで、そうした事態の解決に政府も企業も市民も皆が真剣に取り組まねばならない。
3、いま必要なのは、天然資源のフローを現在の10分の1に減らすことだ。言葉を変えれば、天然資源の活用の効率を10倍にすることだ。ついては、世の中に提供する様々なサービスの単位当たりの物質投入量を表す尺度として「MIPS(マテリアル・インプット・パーユニット・サービス)」を採用していくことを推奨したい。これは、経済のエコロジー評価を行うためのLCAの1指標ともなる。
4、プラスチックはMIPS因子が非常に低い。鉄や紙や木をかなり下回っている。塩ビもその一つだ。先進国の間で窓枠にアルミに代わって塩ビ製品がしきりに使われている点は極めて妥当と言える。塩ビの場合は寿命が長く、また環境負荷も小さいのでなおさらだ。ドイツではほとんどの窓枠は塩ビ製品に代わっている。
5、いまは、皆がこうした点も十分に念頭に置いてサステイナビリティーを追求していかねばならないときだ。日本でも社会全体がその方向に向かって行動を起こさないと国際社会から置いていかれることになる。