2014年08月28日
理研、ベンゼンの「炭素―炭素結合」常温切断に成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は28日、多金属のチタンヒドリド化合物を用いて、非常に安定なベンゼンの「炭素―結合」を室温で切断することに成功したと発表した。従来困難とされていた芳香族化合物の炭素―炭素結合の切断を使った新しい物質変換反応の開発への寄与が期待できる。

ベンゼン環を含んだ芳香族化合物は、石油やバイオマスなどの天然資源に含まれており、これらの芳香族化合物の炭素―炭素結合の切断は、石油などの天然資源からガソリンや基礎化学品などを作る際に極めて重要な反応となる。だがその結合切断には、固体酸触媒を使って500℃の高温で行う必要があり、多くのエネルギーを消費するのがネックだった。

理研では2013年に、3つのチタン原子からなる新しい多金属ヒドリド化合物(チタンヒドリド化合物)を開発し、これを用いて窒素分子の「窒素―窒素結合」の切断、「窒素―水素結合」の形成に成功した。今回、このチタンヒドリド化合物とベンゼンの反応を試みたところ、室温という温和な条件で炭素―炭素結合が切断できることを発見した。

この反応を検証した結果、まずベンゼン環が3つのチタン金属上に結合し、その後これら3つのチタン金属が互いに協力し合って炭素―炭素結合の切断に働いていることが明らかになった。

分子レベルでベンゼン環が切断される様子を明らかにしたのは今回が初めてである。また、ベンゼンだけでなく炭素が1つ増えたトルエンでも同様の炭素―炭素結合の切断反応が観察された。

この成果は、工業的な芳香族化合物の分解反応のメカニズム解明、温和な条件で反応が進行する新しい触媒の開発などに有用な知見を与えることが期待される。