1999年12月10日
スチレンオリゴマー、EDIの1,000倍投与でも影響なし
「環境ホルモンシンポジウム」で専門機関が発表
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:日本スチレン工業会

 環境庁主催の「第2回内分泌撹乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」は10日に第2日目を迎え、「野生生物への影響」、「日本での調査研究」、「健康影響」、「基礎生物学と環境毒性学」の4テーマに沿って合計27人の講師の講演と質疑応答が行われた。この日も参加者は約1,300人を数え、盛況であった。
 この日の発表の中で特に参加者の注目を集めたのは、財団法人・食品薬品安全センターの長尾哲二博士による「妊娠期および授乳期のラットへのスチレンダイマー・トリマーの経口投与による次世代児への影響」と題する講演であった。同氏の実験は、日本スチレン工業会の委託を受けてラットに高用量のスチレンダイマーとスチレントリマーを強制的に連続投与し、それが母体と次世代児に影響をおよぼすかどうかを調べたもの。EDI(1日推定最大摂取量)の1,000倍というかつてない高い用量のダイマーを連続投与した点が今回の実験の大きな特徴。この場合のEDIには、同ダイマー、トリマーのカップ麺への移行量の最大値とされる62ppbのスープを体重60キログラムの人が1日に1キログラム摂取したケースを採用した。妊娠後6日から分娩後21日まで投与した。
 その結果、母体にも次世代児にも何ら影響は認められなかったという。具体には、母ラットの一般状態、体重推移、摂餌量、妊娠維持、分娩・哺育に変化はなく、また、内部器官にも病理組織学的変化は認められなかったとしている。一方、次世代児の場合も、形態、生存性、発育、初期行動発達(立ち直り反射、断崖落下回避反応、背地走行性)、身体分化、性成熟、学習能を含む行動・機能、性周期、交尾能および受胎能などの生殖機能、血中甲状腺ホルモン濃度、精子の数・運動性・形態、精線を含む内部器官の形態ーーのいずれについてもオリゴマー投与の影響を示唆する異常は認められなかったという。
 同博士は、こうした実験結果から、1日当たり体重1キログラムにつき1ミリグラムのダイマー・トリマーをラットの妊娠期および授乳期に連日経口投与しても次世代児には何ら悪影響をおよぼさないと結論している。
 同ダイマー・トリマーについては、複数のスクリーニング試験が行われ、インビトロ、インビボのいずれの実験でもエストロゲン様作用を示さないことが多くの国で確認されている。今回の発表内容は、それに加えてEDIの1,000倍というとてつもない高い用量の過酷な条件でもなお問題が生じないことを明らかにしたものだけに、ポリスチレン製品の安全性はこれによって一段と鮮明にされることになりそう。