2000年10月18日
DSM、1~2年内に石油化学部門を分離へ
世界第3位のスペシャリティ化学企業を目指す
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:DSM

 蘭・DSMのヤン G.ドッパー(Jan G.Dopper)経営執行役員は18日、東京港区のディー・エス・エムジャパン本社で記者会見し、2005年を最終目標年度とする新規5ヵ年計画を発表した。
 この中でドッパー氏は、1~2年内に基礎石油化学部門を分離して経営資源を専らファイン・スペシャリティ部門の拡充に投入、2005年にはデグッサ/SKW、ICIに続く世界第3位のスペシャリティ化学企業の地位を確保するようにしたいと述べた。
 同氏によると、同社の今年上半期の売上高は39億5,800万ドルで前年同期を33%上回っている。また、EBITDA(金利・税金・償却前利益)は6億8,500万ドルで同48%増、EBIT(利払い・税前利益)は4億3,800万ドルで同89%増となっている。特にこの数年の業績の伸び率は極めて高く、97年に作った最初の5ヵ年計画による2002年の業績目標はいち早く今年でクリアできる見通しにある。これには、医薬中間体やフード・スペシャリティ分野を主たるターゲットにしたライフサイエンス事業とスペシャリティ・ポリマーを主体としたパフォーマンス・マテリアル事業の急速な成長が大きく作用している。
 今年の総売上高は約80億ドルとなる見込みで、そのうちの40億ドルをこれらのファイン・スペシャリティ製品部門が占める見込みだ。オレフィンやポリオレフィン等の基礎石油化学製品部門の売上は約30億ドル、また、カプロラクタムやメラミンなどの戦略化学品はおよそ10億ドルとなる公算が強い。
 こうした中で今回同社がまとめた新規5ヵ年計画では、2005年の年間売上高を100億ドルに拡大することにしている。この中期経営計画の中で特に注目されるのは、100億ドルのうちの80億ドルをファイン・スペシャリティ製品部門でカバーし、残り20億ドルをカプロラクタムやメラミンといった戦略化学品で占めるように持っていくとしている点だ。現在の売上高の37%を占めている基礎石油化学製品への依存度をゼロにするという思い切った構造改革が主眼となっているわけだ。
 このため、できれば1年以内にオレフィンとポリオレフィン部門を分社化し、次ぎのステップとして有力石化企業との合弁事業に改める考えという。そして将来は別の企業に売却することもあり得るとしている。合弁のパートナーとしては、世界的な事業規模を持った有力候補が存在しているとも述べている。
 そうした反面、ファイン・スペシャリティ事業については既存のビジネスの拡充と有力企業の買収によって急ピッチで拡大していく方針だ。同氏は、こうした思い切った内容の構造改革に着手することにした背景について「現在、欧米の汎用石油化学企業の多くは、大胆なアライアンスによって規模を拡大し寡占化する方向にある。当社はそうした流れとは逆に、かねて得意としているファイン・スペシャリティ事業の拡充に専らエネルギーを投入して高機能化学品の専門企業に脱皮していくのが得策と判断したわけ」と説明している。また、これからのアジア戦略についても触れて「日本を始めとしたアジアの市場をより積極的に開拓していく考えで、当面の目標を全世界の売上高の20%をアジアで占めることに置いていく」と述べた。なお、DSMの現在の石油化学設備は、エチレンが年産100万トン、ポリエチレンが同120万トン、PPが同100万トンとなっている。