2000年10月17日 |
旭化成、炭酸ガスを用いた新規樹脂加工技術AMOTECを開発 |
成形機メーカーと提携し来年4月から専用設備を販売 |
【カテゴリー】:新製品/新技術 【関連企業・団体】:旭化成 |
旭化成工業は16日、射出成形時に炭酸ガスを用いて樹脂の流動性と金型表面転写性を改良することにより、薄肉成形品や微細な表面パターンを持つ成形品の量産を可能とした新技術「AMOTEC(アモテック)」を開発した、と発表した。同技術は、携帯端末向けなど機能樹脂を用いた製品の薄肉軽量化を可能とするだけでなく、一般成形品についても表面品位の向上により塗装を省略でき、樹脂のリサイクルを容易にするなど、環境面にも配慮した技術で、成形機メーカーとの協力により、来年4月にも専用設備を販売する考え。 樹脂の加工技術において、射出成形法は最も汎用的に使用されている技術であるが、(1)溶融樹脂は粘度が高いため、金型に射出充填する際に高い圧力が必要なため、薄物成形金型の場合、樹脂が金型のすみずみに行きわたらないことがあるという樹脂流動性の問題や、(2)樹脂が金型に触れた瞬間に固まってしまうため、金型の微細な表面パターンを忠実に樹脂に転写することが難しいという金型表面転写性の問題、(3)金型内で樹脂が固まった後、室温まで冷える間に、成形品の一部がへこんだり、全体の形が変形するなどの現象を生じる樹脂の収縮の問題などがあり、改善が求められている。これらの問題解決の手段として、様々な技術が開発されており、旭化成も旭ガスインジェクション成形技術(AGI)をはじめ、GPI、CSMなどの成形技術を開発、高い評価を得ている。しかし、これらの技術は、主に収縮や樹脂表面状態の改善に関するもので、流動性の改善にはこれまで決定的・本質的な解決法がなかった。 今回同社が開発したAMOTEC(Asahi Molding Technology with CO2)は、炭酸ガスの持っている樹脂を可塑化する効果を利用し、樹脂流動特性と金型表面転写性の問題を同時に解決する汎用性の高い技術で、射出成形の新たなステージを拓く新世紀の加工技術として位置付けている。具体的には、射出成形機シリンダ内に炭酸ガスを溶融させる一方で、金型内にもあらかじめ炭酸ガスを満たしておき、そこに樹脂を射出成形するもの。炭酸ガスにより樹脂が可塑化されるため、樹脂の流動性が大幅に向上、薄肉金型に樹脂を充填することができるようになるほか、金型に触れた樹脂の固化が遅くなるため、金型表面の微細なパターンを樹脂表面に忠実に転写することができる、などの効果が得られる。 同技術の用途としては、(1)エンプラなど、優れた物性を有するものの、成形性に難のある樹脂材料を使用した薄肉成形が必要な、携帯情報端末分野や、(2)微細な金型形状までを転写することが求められる、導光板やレンズ、光ディスク分野のほか、(3)成形品の表面品位向上により、塗装が不要、リサイクルも容易になるため、その他の成形品分野を挙げている。 また、一般的に可塑剤として用いられている油状の液体は、流動性の向上や溶融温度の低下などの可塑化効果を示す反面、樹脂自体の硬さや強さなど基本物性も大きく変えてしまうという欠点がある。これに対し炭酸ガスは、成形時に良好な可塑化を示すだけでなく、成形後は放散してしまうため、樹脂の物性に影響を与えないという優れた特徴がある。この効果については、1980年代から知られていたが、炭酸ガスの専用供給関連装置を含め、今回同社が実用技術として完成したもの。 なおAMOTECを用いた成形機は、炭酸ガスを加圧して可塑化シリンダと金型に供給する炭酸ガス供給装置、特殊なスクリューを用いて溶融樹脂に炭酸ガスを溶かす可塑化シリンダの2つの装置が必要となっている。これらの装置については、射出成形機メーカーへの技術ライセンスを検討中で、ユーザーは成形装置一式を成形機メーカーから購入することで、同技術の使用が可能となる。このため今後旭化成は、成形機メーカーと提携、同技術を広く市場に展開していくとともに、樹脂事業部隊を中心に同技術の用途開発を進めていく方針。 <参考>成形装置の概念図 http://c-nt.co.jp/news/amotec.jpg> |