2015年06月11日
理研、「眠り病」の病原体結合タンパク質発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は11日、食用キノコのエリンギに、眠り病(アフリカ睡眠病)の病原体の脂質に特異的に結合するタンパク質が存在することを発見したと発表した。このタンパク質「エリリシンA」の性質を利用して、眠り病の一次診断や治療に応用できる可能性が示されたとしている。

眠り病の病原体であるトリパノソーマに対する特効薬は現在のところ開発されていない。ワクチンや抗体療法による予防や治療が考えられているが、トリパノソーマは抗原変異を繰り返すため成功していない。

理研では、3つのタンパク質、エリンギ由来の「プロロトリシンA2」、「エリリシンA」、ヒラタケ由来の「オステリオシン」が、脂質のCPEとコレステロールの複合体と非常に強く結合することを発見した。このうちプロロトリシンA2とオステリオリシンはヒトの主要指標の1つである「スフィンゴミエリン」にも弱く結合する性質があるため、トリパノソーマだけでなくヒトの細胞にも結合した。一方、エリリシンAはスフィンゴミエリンへの結合活性はなく、ヒトの細胞には結合しないことがわかった。

エリリシンAとトリパノソーマの結合は数分で起こるため、トリパノソーマ感染の一次診断に利用できるだけでなく、トリパノソーマ感染の治療に応用できる可能性が示された。