2015年08月24日
東大、茨城大など、タンパク質の多彩さ・巧妙さ可視化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

草や木のようなバイオマスを効率よく分解する技術の開発が求められる中、東京大学大学院農学生命科学研究科の五十嵐圭日子准教授のグループは24日、茨城大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、琉球大学、兵庫県立大学などとの共同研究によって、大強度陽子加速器施設(J-PARC)に設置した茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)を用いて、きのこが生産する酵素セルラーゼ(PcCel45A)の中性子を用いた構造解析に成功したと発表した。

その酵素は酵素反応に重要なアミノ酸を「イミド酸型」という特殊な状態にすることで行なっている。そのアミノ酸付近では水素原子が「かちかち玉」のように移動し、酵素反応が繰り返されるメカニズムも明らかになった。

植物体の主成分であるセルロースは地球上で最も豊富に存在するバイオマスだが、セルロースは化学的に極めて安定している。化学反応でセルロースを分解してその構成糖であるグルコース(ぶどう糖)を得るためには、強い酸やアルカリを高温・高圧条件下で用いなければならず、多くのエネルギーが必要となる。

だが自然界ではセルロースはさまざまな微生物が出す「セルラーゼ」という酵素によって常温・常圧で分解され、微生物の栄養源として利用されている。つまり、セルラーゼを使いこなすことができれば、木や草などのセルロース系バイオマスから液体燃料やプラスチックが生産できるようになる。
今回の研究により、タンパク質の多彩さ・巧妙さを解明するためにはX線結晶構造解析に加えて水素原子の情報が得られる中性子構造解析が必要であることが明らかになった。今回の可視化成功によって、タンパク質の多彩さ・巧妙さが次々に解明され、タンパク質化学の発展に寄与することが期待されるとしている。

同研究の成果は科学雑誌「Science Advances」8月21日オンライン版に掲載された。