2015年09月04日 |
東大、脳神経回路網形成のメカニズムを解明 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:東京大学 |
東京大学医学部の廣川信隆特任教授(細胞生物学)と小川覚之特任助教らの研究グループは4日、脳神経回路網形成をコントロールするメカニズムを解明したと発表した。細胞内の骨格である微小管の伸び縮み(重合・脱重合)を制御する仕組みを解明した。 ヒトの体をつくるそれぞれの細胞には微小管という細胞骨格があり、環境や発生段階の変化に応じてその形や働きを変化させている。キネシンモーター蛋白(KF2)が微小管を脱重合する働きを持ち、脳の神経回路網の形成に基本的役割を持つことはこれまでに知られていたが、その活性がどのように外界の刺激に応答して制御されているのかは未知だった。 同研究グループは細胞生物学や分子生物学などの手法を使って解析した結果、特異的なキナーゼが微小管を脱重合するタンパク質KF2の部位をリン酸化し、アクセルとブレーキのように働くことによって微小管の重合・脱重合を制御していることを明らかにした。この仕組みにより神経細胞は置かれた状況や外界からの刺激に応じて微小管の伸び縮みを自在にコントロールし適応することができることになる。 生命の維持や疾患の発症に重要な役割を持つ分子の制御機構を明らかにすることは、生命の仕組みの解明・疾患の発症機序の解明にとって重要となる。今回、神経細胞における微小管脱重合の制御機構を明らかにしたことは、脳の神経回路網形成の基本的メカニズムを解明し、神経変性疾患の発症機序の解明や治療薬開発につながると期待される。 論文は「CellReports」(8月18日付)に掲載された。 |