2015年09月10日
東大、「貯蔵された記憶の可視化」技術開発、世界初
【カテゴリー】:行政/団体(ファインケミカル)
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東京大学大学院 医学系研究科の河西春郎教授らの研究グループは10日、マウスを使った実験で学習・記憶が貯蔵されている脳内の場所を可視化・操作する新技術を世界に先駆けて確立したと発表した。

大脳皮質を形成する数百億もの神経細胞はシプナスを介して情報をやりとりしており、その多くは樹状突起スパインという小突起構造上に形成されている。研究グループは、このスパインが学習・記憶に応じて増大することに着目した。これらのスパインを特異的に標識し、青色光を照射することでそのスパインを収縮させることが可能なタンパク質プローブ(記憶プローブ)をマウスで開発、学習・記憶が貯蔵されている場所を可視化・操作する新技術を確立した。

この記憶プローブを導入したマウスでは、運動学習によって獲得された記憶が、大脳皮質への青色レーザーの照射によって特異的に消去され、記憶は脳内の少数の神経細胞に密に書き込まれていることが明らかになった。
こうして記憶に関わるスパインが真に記憶素子として使われている様子を可視化し、また操作する新技術を世界に先駆けて確立した。スパインの脳内の大域的な分布を標識する可能性が開かれ、脳機能やその疾患の解明に新しい糸口が開かれたことになる。

同研究は日本医療研究開発機構(AMED)の「脳機能ネットワークの全容開発プロジェクト」、科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業」、文部科学省の科学研究費などの支援を受けて行った。
国際科学誌「Nature(電子版)」の9月9付(現地時間)オンライン版で発表する。