2015年09月25日
理研と東大院、電気で生きる微生物を初めて特定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所、東京大学

理化学研究所は25日、東京大学大学院の橋本和仁教授らとの共同研究で、電気エネルギーを直接利用して生きる微生物を初めて特定し、その代謝反応の検出に成功したと発表した。

一部の生物は、生命の維持に必要な栄養分を自ら合成する。栄養分を作るにはエネルギーが必要で、例えば植物は太陽光をエネルギーとして二酸化炭素からデンプンを合成する。太陽光が届かない環境では化学合成物と呼ばれる水素や硫黄などの化学物質のエネルギーを利用する生物が存在する。二酸化炭素から栄養分を作り出す生物は、これまで、光合成か化学合成のどちらかを用いていると考えられてきた。

共同研究チームは、2010年に太陽光が届かない深海熱水環境に電気を非常によく通す岩石があることを見出した。そして、電気を流す岩石が触媒となり、海底下から噴き出る岩石と接触することで電流が生じることを発見した。
その上で、海底に生息する生物の一部は光と化学物質に代わる第3のエネルギーとして電気を利用して生きているのではないかという仮説を立て、研究を実施した。

共同研究チームは、鉄イオンをエネルギーとして利用する鉄酸化細菌に着目し、鉄イオンは含まれず、電気エネルギーのみがエネルギー源となる環境で細胞の培養を行った。
その結果、細胞の増殖を確認し、細胞が体外の電極から電子を引き抜くことでNADH(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)を作り出し、ルビスコタンパク質を介して二酸化炭素から有機物を合成する能力を持つことを突き止めた。さらに、この鉄酸化細胞は、わずか0・3V程度の小さな電位差を1V以上にまで高める能力を持ち、非常に微弱な電気エネルギーの利用を可能にしていることが分かった。

今回の研究は、電気が光と化学物質に続く、地球上の食物連鎖を支える第3のエネルギーであることを示した。この成果は今後、微生物が持つ微小電力の利用戦略の研究に役立つことが期待される。

同成果はスイスのオンライン科学雑誌「Frontiers in Microbiology」(9月25日付)に掲載される。