2015年12月02日
理研、がん細胞の運動を制御する新たな仕組み発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は2日、酸化ストレス応答転写因子Nif2の負の制御因子であるKeap1の新しい機能を発見し、がん細胞の運動を制御する新しい仕組みを発見したと発表した。
アクチン結合タンパク質であるコータクチンは、がん細胞の浸潤、転移に関わる重要な因子で、多くの浸潤がんに高発現していることから、がん転移治療の標的分子として着目されていたが、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。

理研では、コータクチンのアセチル化修飾酵素を調べている過程で、コータクチンが核と細胞質を行き来するシャトルタンパク質であることを見いだした。さらに、コータクチンの新しい結合パートナーとして酸化ストレス応答転写因子Nif2の負の制御因子であるKeap1を発見した。

Keap1はコータクチンの細胞質にとどめおき、さらに外部シグナルに応答して細胞辺緑部へ運ぶことにより、細胞の運動を増進するという新しい機能を持つことが明らかになった。この時コータクチンがアセチル化されているとKeap1との結合が弱くなるため、がん細胞の運動性が著しく低下することもわかった。

これらの研究成果により、これまで酸化ストレス応答の制御因子であると考えられていたKeap1による新しいがん細胞運動性制御メカニズムを明らかにすることができた。この成果は、新しいがん転移治療法の開発につながると期待される。