2015年12月07日
宇田川東ソー社長「フル稼働状態 当分続く」
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:東ソー
宇田川憲一社長

東ソーの宇田川憲一社長は、4日の記者会見で、「石油化学事業、クロル・アルカリ事業、ウレタン事業はいずれもほぼフル稼働状態にある。少なくとも来年前半まで続くだろう」と、同社の経営概況や見通しを説明した。
成長戦略として「バイオサイエンス事業や自動車向けハイシリカゼオライトなどの高機能材料をあげさらなる拡大に意欲をみせた。

宇田川社長は、石油化学セグメントについて「四日市のオレフィンプラントが非定修年ということもあり、上期は約95%、下期はほぼフル稼働と高稼働を続けている。誘導品のポリマーやキュメンもフル稼働している。原油・ナフサなど原料コストが下がり適正なスプレッドが確保でき収益改善につながった」と説明。ポリマー事業については「ポリエチレンは高付加価値化、特殊品化を急いでいる。超高分子量ポリエチレンの事業化など、引き続き収益向上に取り組む」とした。

クロル・アルカリセグメントも順調のようで「VCMがほぼフル稼働している。第3VCMプラント(40万トン、既存設備と合わせて65万トン)建設のタイミングがよく、国内外のPVCメーカーへの安定供給が可能になった。PVCは中国などのアセチレンカーバイド法との競争力にも相対的に優れ、有利な条件で販売できている。インド向け輸出はとくに好調だ」と語った。

機能商品セグメントは、バイオサイエンスとアミンなどの化成品、ゼオライトなどの高機能材料の3本柱がいずれも堅調で「バイオ関連はあまり間口を広げず、計測と診断という得意分野を中心に展開を加速する。先にインドの対外診断薬製造会社、Lilac Medicare社を買収したので、診断分野の市場拡大に生かしたい」。

自動車排ガス浄化用触媒の「ハイシリカゼオライト」は期待商品の1つ。今年4月南陽事業所に設備増設したが、マレーシア新設備が16年末完工の予定だ。「自動車排ガス規制は先進国だけでなく、これからは中国、インドなどでも強化されていく。需要の伸びに対応して17年中にはさらに40%の設備拡大を図りたい。世界最大のメーカーを目指す」と力を込めた。

同社は現在、四日市、周南、横浜などに高分子や無機・有機材料、ライフサイエンス、ウレタン、ファンクショナルポリマーなど7つの研究開発拠点を持つ。宇田川社長は「研究の重点はライフサイエンス、環境・エネルギー、電子材料の3領域だが、現場にはスピード感をもってやってほしいと期待している」。

来年以降の原油価格動向についての質問には「今のような世界的な供給過剰状態が続く限り、国際市況が大きく変わることはないと思う」と落ち着いた表情。来年春策定予定の次期中計につては「成長に軸足を置いた内容にしたい」とキッパリ。さらなる成長へ大きく踏み出したい考えのようだった。