1999年11月02日
EDC洗浄設備も排出基準10pg/lの特定施設に
中央環境審議会、2日の水質部会でダイオキシン答申案まとむ
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:三菱化学

 中央環境審議会の水質部会は2日、「ダイオキシン類環境基準専門委員会」と「ダイオキシン類排水規制専門委員会」の合同会合を開き、それぞれの検討テーマに関する答申案を審議して結論をまとめた。
 それによると、前者については「飲用水を飲むことによる直接摂取を考慮し、WHOの取り扱いに照らして1pg/TEQ/lをダイオキシン類対策特別措置法に基づく水質汚濁に係わる環境基準として設定する」との点で意見の一致を見た。ただし、底質の環境基準については、「底質から魚介類への移行に関する知見が不足しているので、今後の検討課題とする」との結論に落ち着いた。
 一方の後者に関しては、「一般廃棄物焼却施設の廃ガス洗浄施設・湿式処理集じん施設・汚水等を排出する灰ピット、クラフトパルプ製造用施設のうちの塩素系漂白施設、塩ビモノマー施設のうちの2塩化エチレン(EDC)洗浄施設——など合計9種類の施設を特定施設に指定する必要がある」とし、そしてそれぞれの施設ごとに設けるべき水質排出基準案もまとめた。EDC施設の排出基準案は新設施設が10pg-TEQ/l、既設施設が3年間通用の暫定基準として20pg-TEQ/lとなっている。
 環境庁では、この日の答申案について一般の人からファクシミリや郵送や電子メールなどで意見を求め(パブリック・コメント)、それも考慮して同審議会の最終答申とする考え。
 もっとも、今回の答申案のなかで、新たに1pgの水質基準を設けるとともにEDC洗浄施設等に排出基準を設定するとの結論がまとめられたことについては化学業界を始めとした産業界の間に首をかしげる向きが多い。当日の会合に出席した西山紀彦特別委員(三菱化学専務)もその一人だ。同委員は「本来大きな差異が出るはずのない同じオキシクロリネーション法施設におけるダイオキシン類測定値に数倍、あるいは10倍もの開きが生じているデータが示され、そしてそれをベースに答申案がまとめられている点は納得いかない」という。当日の会合でもその旨を強調し、委員の中には同意を表明する向きもあったが、記録するにとどめられた。
 この点について原田浩・鐘淵化学工業環・安全部総括担当部長も「まったく西山さんの指摘される通り」と言い切る。加えて「それに、もともと大気に比べても無視してよいといえるほど少量にすぎない排水中の数値を取り上げて規制するのはおかしい」とも指摘する。それというのも「環境庁が明らかにしている平成10年度のダイオキシン類の年間総排出量は2,900グラムであり、排水中のダイオキシン類の排出量は同0.56グラムにすぎない。つまり、ほとんどの発生源が焼却施設からの大気を経てのものにあることはよく知られているところであり、それにもかかわらず今回のように極微量のものを規制してもまるで意味がないから」という。ちなみに、環境庁の調査によると現在のEDC装置からの排出量は今回の規制案を完全に下回っている。