2016年02月01日
理研、薬剤分子の新たな化学変換法を開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は1日、フッ素原子を持つ医薬品から分子プローブを簡便かつ迅速に合成する新しい化学変換法を開発したと発表した。

医薬品などの分子が生体内で機能する仕組みを解明するには、その分子が体内のどの場所で、どの分子と相互作用するかを知るかを知ることが重要である。分子プローブは、目的に応じて人工的に機能を付与した分子の総称で、分子が働いている場所を可視化したり、相互作用する相手を特定するために用いられる。分子プローブを簡便かつ迅速に合成する新しい手法の開発が望まれていた。

理研では、既存の医薬品の多くがフッ素を含むことに着目し、フッ素を反応性の高いホウ素に置き換えた後に、様々な機能を持つ原子や官能基を導入する方法を着想した。フッ素を分子につなぎとめている炭素-フッ素結合は安定した化学結合のため、フッ素の化学変換は困難であったが、触媒としてニッケルと銅の2種類の金属錯体を同時に用いることで、フッ素をホウ素に置き換える化学反応に成功した。さらに、ホウ素の多彩な反応性を活用し、本来フッ素原子が存在した場所に様々な原子や官能基を導入することにも成功した。

この2つの化学変換を用いることで、高脂血症治療薬のスタチン誘導体から簡便かつ迅速に分子プローブを合成できることを実証した。同手法により、炭素-フッ素結合を持つ医薬品を多彩な用途に活用できるだけでなく、様々な分子プローブの開発が容易になり、分子プローブを用いた創薬研究や生命科学研究の加速が期待できる。