2016年02月04日
理研、シルク材料での水の影響を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は4日、空気中に存在する水分子が、シルクの繊維状及びフィルム状における結晶構造と物性に与える影響を解明したと発表した。

カイコ糸やクモ糸に代表されるシルクは、軽量性、強靭性、低細胞毒性などの特性があり、医療用縫合糸としてすでに実用化されている。再生医療などの分野への応用も検討されている。その一方で、軽量で強靭だというシルク本来の特徴に対する注目度は低く、構造材料としての利用は進んでいない。その原因は水の影響を受けやすいことが挙げられており、シルクの物性に水が与える影響を定量的に評価できれば、水の状態を制御したシルク由来材料の創製につながると考えられる。

理研では、含水量が異なる3種類のシルク材料を調製し、水分子がシルク材料の結晶構造と物性に与える影響を定量的に評価した。その結果、水分子が「可塑剤」として機能することで、シルク分子の運動性を向上させ、ベータシート結晶構造を誘起することがわかった。

水分子がシルクの結晶構造を誘起するという今回の発見は、グリーンケミストリーに貢献すると考えられる。さらに、シルクの熱的安定性について、繊維状の方がフィルム状よりも向上することを示し、シルクの形状を制御することで熱的安定性を制御できることを示した。今回、水分子とシルクの結晶化と物性の関係を定量的に評価したことで、今後、シルクの構造材料としての利用に大きく寄与すると期待できる。