2016年02月17日 |
理研と産総研、強誘電体中の新たな量子現象を発見 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:産業技術総合研究所、理化学研究所 |
理化学研究所(賀川史敬ユニットリーダー)と、産業技術総合研究所(堀内佐智雄研究チーム長)の共同研究グループは16日、有機物質の強誘電体において、水素原子と同程度の有効質量を持つ強誘電ドメイン壁を発見したと発表した。 強誘電体中の強誘電ドメイン壁は、一般に電界を印加することによって動くがその過程では、熱エネルギーによって活性化された揺らぎ(熱揺らぎ)が主要な役割を果たしている。そのため熱揺らぎが失われる温度では、電界の印加によって強誘電ドメイン壁を動かすことは難しい。 ただ、揺らぎには熱揺らぎのほかに、量子力学的な原理によって起こる量子揺らぎが存在する。熱揺らぎが失われる極低温環境下で、大きな量子揺らぎが存在した場合、強誘電ドメイン壁が電界下でどのような挙動をするかはまだ解明されていない。 共同研究グループは、有機強誘電体に加える圧力を制御することで、極低温下でも大きな量子揺らぎが存在する状態を作り出した。その結果、比較的小さい電界の印加によって強誘電ドメイン壁を動かすことができることを見出した。さらに量子揺らぎの下で動かした強誘電ドメイン壁の運動を解析し、有効質量を産出したところ、重い有機分子で構成されているにもかかわらず、あたかも水素原子と同程度の軽さのような振る舞いが示された。 今回の発見は量子揺らぎが強誘電体ドメイン壁の運動に与える特異な一面をとらえたものであり、強誘電体における量子効果の理解を深めると期待される。 同成果は英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」(2月16日付)に掲載された。 |