2000年09月25日
中外製薬、抗体医薬品関連の開発状況を発表
同分野でバイオジャパン2000にも出展
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:中外製薬

 中外製薬は25日、抗体医薬品関連新規開発品である抗酸化剤BO-653、ヒト型化HM1.24抗体AHM、ヒト型化抗PTHrP抗体CALの3つについて、開発状況を発表した。また26日より東京・新宿の京王プラザホテルで開催されるhttp://www.jba.or.jp/bj2000/index.html" target=_blank>バイオジャパン2000において、抗体医薬品関連で出展する。
 BO-653は、動脈硬化巣の形成・進展を抑制して心事故を予防する、脂質低下剤と併用可能な冠動脈硬化抑制薬、またPTCA(経皮的冠動脈形成術)後の再狭窄を抑制、再PTCAなどの心イベントを予防することを製品コンセプトとしており、同社の新たな創薬の柱として育成を目指している。具体的にはLDL(リボ蛋白)の酸化変性の抑制、酸化LDLから細胞を保護する、血管平滑筋細胞の増殖を阻害する、などの薬理作用がある。PTCA後の再狭窄について同社は、日米欧合計で150万5,000人の患者が投与対象者に該当すると見ており、それぞれの地域で30%の獲得シェアを予想している。来月中旬にはフェーズIIに進む見通しとなっている。
 AHMは、多発性骨髄腫細胞上に高発現しているHM1.24抗原を標的としたヒト型化モノクロナール抗体で、AHMが抗原に結合することによりえフェ区ター細胞を介し抗腫瘍効果を発揮、既存薬にはない得意な薬効を示すとともに安全性にも優れている。従来多発性骨髄腫の治療は、メルファランとプレドニソロンの併用による化学療法を中心に進められているが、平均生存期間は3年間で、生存期間の延長や治癒の期待できる新しいアプローチの治療法が望まれてきた。作用メカニズムは、多発性骨髄腫上の高発現するHM1.24抗原に結合したHMに、宿主のNK細胞などのエフェクター細胞が結合、腫瘍細胞を死に至らしめる。また発現量が少ない場合には作用しない。すでに多発性骨髄腫患者細胞に対し、インビトロでの抗腫瘍効果が証明されている。基本開発戦略としては、日米欧の同時開発を目指しており、まず欧州(英国)で臨床入りし、その後日米と続く予定。多発性骨髄腫の罹患率は人口10万人に4人だが、患者は高齢者が多く、高齢化とともに増加している。2005年における新患者数は日本が6,800人、欧州1万5,500人、米国1万8,400人と推定されている。
 CALは、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連蛋白)の活性を中和するヒト型化モノクローナル抗体で、同社の富士御殿場研究所が保有する抗体工学技術を用いて創薬、安全性にも優れている。PTHrPは、悪性腫瘍にともなう高カルシウム血症(HM)を惹起する液性因子の1つで、HMではがん細胞が作ったPTHrPが骨や腎臓のPTH受容体を刺激して(1)破骨細胞による骨吸収、(2)血中カルシウムレベルの上昇などを来たす。基本開発戦略については、上記2つの症状への効力が期待されるものの、がんの骨転移にともなう骨病変症状の改善を第一の目標として、積極的に開発を進める方針で、従来のビスフォスフォネート系薬剤とは異なるPTHrPに対する特異的な作用機序に基づき、競合品との差別化を図る考え。骨転移を起こす細胞の90%以上がPTHrPを産生している乳がんを治療対象とした場合には、特にこの戦略が重要になると見ている。潜在市場規模については、日米欧におけるHMの患者数として上市時の2005年前後に合計で約17万人を見込んでいる(骨転移を合併する乳がんの推定患者数は焼く10万人)。CALは、同社の医薬品開発戦略の中核をなすがんおよび骨代謝の2領域の強みを活かして創薬された、がん領域の新薬候補品として、また研究所が保有する抗体工学を活用して創薬されたMRA、AHMに続く、第三の治療用ヒト型化抗体に位置付けられている。