2016年03月08日
東大、1細胞の成長ゆらぎがクローン成長を促進
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学大学院の若本祐一准教授(総合文化研究科)らの研究グループは8日、均一な遺伝情報をもつクローン細胞集団内に1細胞レベルの「成長ゆらぎ」があることで、集団がより速く成長できることを明らかにした。

同じ遺伝情報をもつクローン細胞を同じ環境に置いても、個々の細胞のさまざまな性質(表現型)には、しばしば大きなばらつきが観測される。このような「表現型ゆらぎ」は遺伝子情報と異なり、これまであまり重要視されてこなかった。研究グループは今回、細胞表現型ゆらぎが、明確な生物学的役割をこつことを示すとともに、異なる環境条件下での成長ゆらぎを定量的につなぐ新たな法則を明らかにした。

同グループは、大腸菌を対象として、細胞の状態変化を厳密な環境制御下で100世代以上の長期にわたって連続観測可能な新たな計測システム「ダイナミクスサイトメーター」を開発し、細胞レベルで見られる成長ゆるぎの性質とそれらの細胞によって構成される細胞集団の性質を調べた。その結果、一定の環境下に置かれたクローン細胞集団は、構成する内部の細胞の平均的成長率よりも高い成長率で増殖できるという一見直観に反する事実を明らかにした。

同定された表現型ゆらぎの法則の解析により、今後さまざまな生物種において、成長率の原理的上限などの基本性質の解明につながる可能性がある。

同研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン版に3月8日掲載予定。