2016年03月09日 |
第7回化学遺産に写真家の「上野彦馬」など5件認定 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:日本化学会 |
日本化学会は、化学と化学技術に関する貴重な歴史資料の保存と利用促進を目的にして平成20年から「化学遺産認定制度」をスタートさせているが、このほど「日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料」、「日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料」など5件を第7回化学遺産に認定した。これで化学遺産認定は38件となった。3月26日の日本化学会第96春季年会の各賞表彰式で認定証を贈呈する。 新たに化学遺産に認定されたのは次の5件。 ◇「日本の写真化学の始祖<上野彦馬>関連資料」 :上野氏は、坂本龍馬、高杉晋作など幕末から維新にかけて活躍した人物や長崎の風景など多くの貴重な写真を残したカメラマン。銀板写真から湿板写真、乾板写真へと写真技術が進展する中で、常に最先端の技術を習得し日本の写真化学・撮影術の基礎を築いた。 ◇「明治期日本の化学の先駆者・化学会初代会長 久原躬弦関係資料」 :1877年に東京大学理学部化学科を最初に卒業生した3人のうちの1人。現在の日本化学会の初代会長に選任された。東京大学教授、京都帝国大学理工科大学長、第4代総長を歴任した。明治初期におけるわが国化学界の先駆者。 ◇「野副鐵男の化学遺産/非ベンゼン系芳香族化合物資料と化学者サイン帳」 :野副鐵男は、台北帝国大学でタイワンヒノキの精油からヒノキチオールと名付けた物質を単離し、1948年帰国後これが前例のない不飽和七員環構造を含み、芳香族を示すことを明らかにした。その後、非ベンゼン系芳香族化学という新しい分野を創始し確立した。 ◇「日本の高圧法ポリエチレン工業の発祥を示す資料」 :1943年から海軍の委託を受けて野口研究所―日本窒素肥料、京都大学―住友化学工業、大阪大学―三井化学工業の3グループで研究され、1945年1月に日本窒素肥料水俣工場で小規模に工業化された。しかし、同年5月に空爆を受けて設備が完全に破壊された。戦後、京都大学で研究が再開され、連続中間試験が行われ、その設計図、研究ノート、研究報告書が化学遺産に認定された。 ◇「日本の近代的陶磁器産業の発展に貢献したG・ワグネル関係資料」 :ドイツ出身のG・ワグネルは1881年に東京大学理学部化学科教授となり、日本の近代的陶磁器産業の礎となる吾妻焼の窯を築いた。吾妻焼は「旭焼」と名が改められた。旭焼は、日本画の持つ筆の運びと多彩な色彩における濃淡表現をそのまま損なうことなく、絵付けされた陶器として知られる。 |