2016年03月17日
利根川進氏ら、アルツハイマー喪失記憶を復元
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は17日、アルツハイマー病モデルマウス(ADマウス)の失われた記憶を、光遺伝学を用いて人為的に復元することに成功し、このモデルマウスで記憶を思い出せなくなるメカニズムの一端を解明したと発表した。

理研・MIT神経回路遺伝学研究センターの利根川進センター長らの研究チームが解明した。
アルツハイマー病(AD)は、物忘れなどの記憶障害から始まる。認知症患者のうちADは約7割を占める。
同研究チームは2012年、記憶の痕跡が海馬の「記憶エングラム」と呼ばれる細胞群に保存されることを証明した。そこで、ヒトのAD患者と同様の神経変性を加齢に伴って示すADマウスでは記憶エングラムがどうなっているのかを調べた。マウスを実験箱に入れ、弱い電流を脚に流す体験をさせた翌日、再びマウスを同じ箱に入れた。すると、マウスは嫌な体験の記憶を思い出してすくむ。

研究チームはさらに、ADマウスにおける記憶想起の障害が、神経細胞同士をつなぐシナプスと関連していることを突き止め、光遺伝学を用いてこの記憶想起も正常化することを実証した。
利根川センター長は「AD患者の記憶は失われておらず、思い出せないだけかもしれない」と話しているという。
今後のAD治療・予防法の開発につながることが期待される。