2016年03月23日
小林日化協会長「IoT活用し保安情報共有へ」
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:日本化学工業協会
小林喜光会長

日本化学工業協会の小林喜光会長は23日の定例記者会見で、当面の課題や活動状況について説明した。
この中でIoTを利活用したコンビナート企業間での情報共有構想が煮詰まっていることを明らかにした。当面は「保安・安全」に関する情報が中心になると見られるが、開発・生産・物流面にまで拡大の余地があることも示唆した。企業間の壁を越えることに難しさはあるものの、コストの大幅低下が期待できるなど効果も大きいだけに今後の動向が注目される。小林会長の説明要旨は以下の通り。


■経済・景気動向
2016年に入り円高の進行、不安定な原油価格、株価の下落さらには中東情勢の不安定化など、先行きが読みにくい状況になっている。先日発表された中国の1~2月の鉱工業生産統計を見ても、リーマンショック以来7年ぶりという低い伸びにとどまり、輸出も8カ月連続の前年割れとなるなど、依然として回復の兆しが見えないようだ。
日本の化学業界は、原油や為替が安定してきたこともあり、エチレン稼働率は2月に94.3%と高率を維持している。だが、原油、為替に加えて新興国や欧米の景気動向など、今後の動向にはなお注視していく必要がある。

■日化協の活動
◇化学物質の危険有害性関するリスクアセスメント義務化
日化協活動の基本となる3つのキーワードのうちの1つ、「安全の強化と水平展開」については、労働安全衛生法の改正により、6月から義務化される「化学物質の危険有害性に係るリスクアセスメント」実施に向け、種々対応を強化しているところだ。リスク評価支援ツール「BIGDr(ビッグドクター)」の展開に続き、2月には「混合物リスク評価ガイダンス」を公開した。来月にはリスクアセスメントに関する「ガイドライン」を発行し、義務化への対応法をサポートすることにしている。

◇化学品管理の強化
化学品管理では、ICCM4など国際会議の場でも「2020年までに人の健康や環境への悪影響を最小化」するという目標が採択されているが、その中でサプライチェーン全体でリスクを最小化することが求められた。
日本でもサプライチェーン全体で利用可能となる情報伝達スキーム「chemSHERPA(ケムシェルパ)」が本格運用に向けて立ち上がる。すでに素材メーカーから最終消費財メーカーまで50社以上の企業・団体がこのスキームに賛同し、導入を検討している。

■イノベーションの創出/IOTの活用について
キーワード2つ目の「イノベーションの創出と社会への貢献」では、コンビナート地区内でIoTの利活用による生産・物流・保安など、さまざま分野での情報共有化についての方向性が煮詰まってきた。企業間の壁を越えることの難しさはあるが、「保安・防災」面でならば可能性があると思う。保安・防災情報を共有し、データベース化することで、現場能力の向上に生かすことができる。産官学で推進していきたいと考えている。

◇「海外とのコミュニケーション」
3つ目は「社会とのコミュニケーションの更なる向上」だ。日化協はいま、レスポンシブル・ケアや化学品管理に関するノウハウ等の提供を通じて海外との信頼関係構築に取り組んでいる。今年はインドネシアでサスティナビィリティに関するワークショップを開催する。成長著しいアジアを中心にグローバルに活動していきたい。
中国とは4月に「日中化学政策対話」、9月には「日中化学産業会議」を予定している。情報交換・交流を密にし、さらなる関係強化に努めていきたい。