2000年09月20日
ABS樹脂、国内出荷は総じて好調も採算の改善が課題
一般機器向けは海外移転と他素材転換の影響続く
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:なし

 ABS樹脂の国内出荷は、全般的には好調に推移しており、なかでも車両向けの回復と建材住宅部品向けおよび雑貨向けの好調が顕著となっている。ただし、一般機器向けは近年の多素材への転換に加え、ユーザーの海外移転などにより、需要回復の見通しは困難な状況にある。問題は最近の原料価格の高騰による採算の悪化で、今後値上げが実施されることも十分考えられる。
 一般機器向けには、コピー機やファックス、レーザープリンター、パソコンなどのハウジングが主力用途であるが、これらOA機器のセットメーカーの海外生産移転が急速に進んでいる。ハウジング用途は、数年前から欧州を中心にノンハロゲン化の動きもあって、PC/ABS、PC/PSなどのポリマーアロイへのシフトが進んでいるが、海外生産シフトの動きがさらに追い討ちをかけている格好となっている。ABS樹脂メーカーも、ノンハロゲン難燃グレードの開発を進めるなどの施策には取り組んでいるが、今の所回復するための決定打はなく、困難な状況にある。
 雑貨向けは今春発売された家庭用ゲーム機の販売により好調に推移してきたが、発売から半年を経過し、人気にかげりが出ていると見る向きもあり、今後の需要減が懸念されている。
 ただし、国内出荷全体では総じて好調に推移している。特に自動車向けを中心とした車輌用は、国内自動車メーカーによる欧米向け完成車輸出が好調なことから、本格的に回復してきている。また、建材住宅部品向けも塩ビ建材代替やサニタリー製品向けの需要が好調で、2桁ペースの成長が期待されている。 このように懸念材料はあるものの、数量的には順調なABS樹脂だが、ここに来て原料価格の高騰がコストアップを招き、採算の悪化が懸念されつつある。すでに他のスチレン系製品は、値上げ打ち出しあるいは値上げの検討段階に入っており、これらの動向次第ではABS樹脂の値上げも必要な情勢になっている。