2016年04月12日
理研など、骨硬化症の原因遺伝子を発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は12日、横浜市立大学、東京医科歯科大学との共同研究グループが、骨密度が異常に上昇する骨硬化性骨幹端異形成症の原因遺伝子の1つ「LRRK1」を発見したと発表した。さらに、LRRK1の機能喪失変異により、骨吸収作用を担っている破骨細胞が機能不全を起こし、異常に骨密度が上昇するメカニズムを明らかにした。

骨硬化性骨幹端異形成症は、大理石骨病の一種で、常染色体劣性遺伝病である。管状骨(内部が空洞で細長い棒状の骨)の骨幹端を中心とする全身の骨密度の上昇、発達遅滞、筋緊張低下などの症状を示す。

共同研究グループは、骨硬化性骨幹端異形成症の患者3人の臨床情報とDNA(デオキシリボ核酸)を収集した。このうち1人の患者からLRRK1の7塩基の欠失変異を発見した。過去の研究で、LRRK1を人為的に欠損させたマウス(LRRK1のノックアウトマウス)は、重度の大理石骨病に似た表現型を示すことが知られていた。

共同研究グループは、LRRK1ノックアウトマウスのX線像、組織像を詳しく調べた結果、骨硬化性骨幹端異形成症患者とLRRK1ノックアウトマウスの表現型(骨格異常)が極めて類似していることがわかった。また、正常マウスを使った解析によりLRRK1は、破骨細胞に極めて強く発現し、破骨細胞の分化後期で発現が増強することを発見した。さらに、LRRK1ノックアウトマウス由来の破骨細胞に正常なLRRK1を導入したところ骨吸収活性が回復したが、変異したLRRK1を導入しても骨吸収活性は回復しなかった。このことから、LRRK1は破骨細胞の骨吸収機能に必須で、変異したLRRK1タンパク質ではその機能が消失していることを証明した。

今回、原因遺伝子を発見したことによって、骨硬化性骨幹端異形成症の遺伝子診断、保因者診断が可能となる。また、LRRK1の機能解析を通じて、骨硬化性骨幹端異形成症や類縁疾患の治療法の開発が期待できる。また、骨粗鬆症治療薬の開発にもつながると期待される。

同成果は英国の科学誌「Journal of Medical Genetica」オンライン版(4月7日付)に掲載された。