2016年04月27日
理研、アトピー性皮膚炎の原因遺伝子解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は26日、総合生命医科学研究センターの研究チーム(吉田尚弘チームリーダー)が、モデルマウス(Spadeマウス)を使ってアトピー性皮膚炎発症のメカニズムを解明し発症の予防方法を発見したと発表した。

アトピー性皮膚炎は乳幼児によく見られるが、遺伝要因と環境要因の複合によって発症すると考えられている。
研究チームは、遺伝要因を明らかにするため、マウスに「化学変異原」を与え、その中から、かくなど掻破(そうは)行動の強い皮膚炎を発症するマウスを選別した。

このマウスは、清潔な環境で飼育しても、生後8-10週間でアトピー性皮膚炎を発症する。
遺伝子変異を調べた結果、さまざな細胞の増殖や分化に重要なサイトカインのシグナル伝達因子である「JAK1」分子の遺伝子配列に点突然変異が生じ、JAK1のリン酸化酵素であるキナーゼ活性が増加していることを突き止めた。これにより発症前から皮膚細胞の古い角質がはがれるときに発現するプロテアーゼ(ペプチド加水分解酵素)群の遺伝子発現が上昇し皮膚バリアに機能障害が起こっていることも分かった。

このマウスの皮膚にJAK阻害因子を塗ったところ、プロテアーゼの発現は抑制され、アトピー性皮膚炎の発症を遅らせることができた。軟膏基質として使われるワセリンを塗っても発症の予防ができた。このとき、皮膚バリア機能も正常と同等に保たれるだけでなく、真皮の炎症発生も抑制されることが明らかになった。

また、ヒトのアトピー性皮膚炎でも同じことが起こっているかを調べるために、アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織を調べたところ、6例中4例の表皮細胞でJAK1が活性化していることを発見した。アトピー性皮膚炎は発症後にならないと診断がつかないが、今回の研究で発症の可能性や予防性を示すことができた。

同研究は米国科学誌「Journal of Clinical Inveestigation」オンライン版(4月25日付)に掲載。