2016年05月23日
慶応大、ヒトの大腸腫瘍を体外で培養する技術開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:慶応大学

慶応義塾大学医学部の佐藤俊朗准教授(消化器)らの研究グループは、55種類のヒトの大腸腫瘍を培養皿で増殖させることに成功し、患者体内の腫瘍と同様な性質を持つ、腫瘍細胞バンクを確立したと発表した。

これまで、患者腫瘍の体外での培養は極めて難しく、新しい治療開発の足かせとなっていた。研究グループは大腸腫瘍がん細胞の培養技術を最適化し、培養皿のうえでほぼ全ての大腸腫瘍を増やす技術を確立することの成功した。また培養細胞は、マウスへの移殖により、元々の患者体内でみられた組織構造や転移能をを再現することも実証した。
この成果によって、患者に薬を投与する前に培養皿の中やマウスの研究によって治療薬の効果を予測することが可能になり、新しい創薬開発や患者個人の腫瘍に合わせた個別化治療につながることが期待される。

同研究成果は米国科学誌「Cell Stem Cell」オンライン版(5月19日付)の掲載された。

国内の大腸がん死亡者数はこのところ増加傾向にある。女性はすでに1位(2015年)、男性も2020年には2位に上昇すると予測されている。進行により手術ができない状態の大腸がんに対しては、根本的な治療法が確立されていないためだが、治療薬の開発も、患者ごとに腫瘍の性質が異なることから、開発した薬剤の多くが臨床応用できず、開発効率の低さが問題となっていた。あらゆる患者のさまざまな大腸腫瘍を体外で培養する技術を有することで、創薬や治療方法開発につながると期待される。