2016年06月10日
理研、「水表面の電子を観測」新手法開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は10日、田原太平主任研究員らの研究チームが、独自に開発した界面に存在する分子を選択的に計測できる超高速分光法を用いて、電子が水表面(水と空気の界面)で半分だけ水分子に囲まれた構造を形成することを明らかにしたと発表した。

研究チームは、界面領域の化学変化だけを観測できる新しい分光法「紫外励起時間分解ヘテロダイン検出振動和周波発生分光法」を開発した。この分光法を用いて、電子が水表面でどのように存在するかを調べた。共同研究チームは、水を紫外光励起することで水表面に電子を放出させ、その直後の水表面の振動スペクトルを得ることに成功した。

振動スペクトルの解析の結果、水表面では電子は部分的に水分子に取り囲まれた状態で存在し、約100ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒、100ピコ秒は100億分の1秒)の間に水内部に拡散することがわかった。

開発した紫外励起時間分解ヘテロダイン検出振動和周波発生分光法は、水和電子の観測だけでなく、液体界面で進行するさまざまな化学反応の観測に応用できる。この新しい分光計測法を用いて、今後、界面における化学反応の本質が明らかにされると期待できる。

同成果は近く米国の科学誌「Journal of the American Chemical Society」とそのオンライン版に掲載される。