2016年07月06日
理研、加齢に伴うグリコーゲンの脳内分布変化を可視化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は6日、マウス脳内のグリコーゲンを正確に可視化する新しい手法を開発し、加齢に伴う脳グリコーゲンの分布変化の可視化に成功したと発表した。

最近、グリコーゲンは通常時における脳活動のエネルギー源としてだけでなく、記憶の定着という重要な脳活動にも関わることが明らかになってきた。しかし、脳グリコールは微量で分解されやすく、従来の方法では脳グリコールを保存したまま可視化できないため、正確な脳内分布は明らかになっていなかった。

理研では、マイクロ波照射装置を使った特殊な固定法により生体内のグリコーゲンを保存し、さらに抗グリコーゲン抗体による免疫組織染色法を用いることで、ミクロレベルからマイクロレベルの脳グリコーゲンの分布を可視化することに成功した。その結果、グリコーゲンは脳の海馬、線条体、大脳皮質浅層、小脳分子層に多く存在し、主にグリア細胞の一種であるアストロサイトに局在することが分かった。また、アストロサイト内では、細胞体よりもシナプスや血管と接する突起にグリコーゲンが多く蓄積されていた。さらに、若いマウスと老齢のマウスではグリコーゲンの分布が異なることが明らかになった。

脳グリコーゲンは、記憶の定着などに重要な役割を果たすことが示されており、今回の研究成果は、記憶などのプロセスにおける神経細胞とグリア細胞の相互作用の研究に貢献すると考えられる。また、糖疾患と認知症の関連が近年指摘されているが、今後、加齢に伴う脳グリコーゲンの分布変化とアルツハイマー病に代表される認知症との関連を調べることにより、認知症の発症メカニズムの解明に役立つと期待できる。
この成果は、米国の科学雑誌「GLIA」オンライン版(6月29日付)に掲載された。