2016年10月12日
NIMS、常圧下で金属伝導性を示す単一純有機分子創製
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

物質・材料研究機構(NIMS)は12日、機能性材料研究の小林由佳主幹研究員らのチームが、金属元素を一切含まない単一成分の有機分子を新規に設計し、常圧条件下で金属伝導性を発現することに世界で初めて成功したと発表した。不純物を含まないため従来の有機伝導材料で課題だった耐久性や安定性が向上し、太陽電池用電極やタッチパネルなどへの応用が期待される。

今回、研究チームは、キャリアとなり得るホールを分子自身の中に自発的に発生する独自の設計を施し、常圧条件下で、幅広い温度範囲で金属伝導性を発現する純有機分子の創製を実現した。
この分子(TED)のみでできた膜の室温における電気伝導度は、有機金属の中でもトップクラスに位置する。
さらに、分子軌道計算により、TED上のスピン密度には他のラジカル分子に見られない顕著な勾配が存在し、この電子状態が単一成分分子で金属性を発現する機構に関係する可能性を見いだした。

この発見は、今後、高伝導性有機材料の設計において大きく2つの指針を提供するものと考えられる。1つ目は伝導性を発現させるために不純物を添加するポストドープが必要なくなり、有機伝導性材料の耐久性や化学的安定性を飛躍的に向上させる分子設計が可能となること、2つ目は印刷技術を転用した方法(プリンタブル法)により、簡便に高伝導性有機材料を合成できる実用的な方向性である。

この研究成果は、Nature Materials誌オンライン版に10月10日(現地時間)掲載された。