2016年11月01日
理研と理科大、インフルエンザ感染を防ぐ新機構発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は1日、東京理科大学との共同研究グループが、マウスを用いてインフルエンザウイルスの活性を減退または消失させる抗体(中和抗体)誘導の新しい制御機構を発見したと発表した。

インフルエンザウイルスは喉や鼻から体内に侵入して、重篤な肺炎を起こす。鳥インフルエンザなど病原性の高いウイルスが、変異を繰り返してヒトに感染するようになると危険性が高くなる。
ワクチン接種は、ウイルスが体内へ侵入することを防ぐ抗体を誘導するための有効な手段で。これまで、ワクチン接種による抗体の誘導は、抗体産生の場である「胚中心」と「リンパ濾胞型ヘルパーT細胞(TFH細胞)」の両方が必要と考えられてきた。ウイルスに対して高い結合能(親和性)を持つ抗体が、胚中心でTFH細胞に助けられて作られるためだ。従って、効率よくTFH細胞を活性化することが、効果の高いワクチンの開発につながる。

だが今回、共同研究グループは、季節性インフルエンザウイルスと高病原性鳥インフルエンザウイルスを使い、マウスへのワクチン接種によって、中和活性の高い「免疫グロブリンG2抗体」が作られることを見出した。このG2抗体は、インフルエンザウイルスに対しての親和性は高くないが、中和活性が高いためウイルス感染を十分に予防できる。また、TFH細胞に代わってインターフェロンガンマ(INF-y)を産生する「I型ヘルパーT細胞」が抗体を誘導することもわかった。

この成果により、TH1細胞を活性化することで、低親和性にもかかわらず中和活性が高い抗体を産生できることがわかった。これは、将来予測されるインフルエンザウイルスのパンデミック感染の脅威に対抗する新たな戦術として、効率良くTH1細胞を活性化する新たなワクチン開発に役立つと考えられる。

この成果は、英国の科学雑誌「Nature Immunology」オンライン版(10月31日付)に掲載された。