2016年11月14日
京大、植物プランクトンから光合成リシノール酸生産
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

京都大学は14日、福澤秀哉・生命科学研究科教授らの研究グループが、牡蠣やウニの養殖の餌として利用されている植物プランクトンのツノケイソウからヒマシ油の主成分であるリノシール酸の生産に成功したと発表した。
実用珪藻のツノケイソウで医薬品や化粧品原料となるリシノール酸の生産に成功したことで、微細藻類を用いた有用物質の生産が今後期待される。

同研究グループは、ツノケイソウが水産試験場などで大量培養の実績があり活発な脂質生成経路を持つことから、高付加価値脂質の生産の場として着目した。今回、リシノール酸の生合成酵素遺伝子を真菌の一種である「麦角菌」から単離し、矩形波パルスを用いたエレクトロポレーション法によりツノケイソウに導入して、リシノール酸生産株を確立した。

光合成で増殖する植物プランクトンにはもともと存在しない有用脂肪酸を生産することに世界初成功した。脂肪酸系酵素を強化することで生産量をさらに向上させた。水酸基が露出するリシノール酸が培養液に存在すると、酵母を含む多くの微生物の増殖が阻害されることから、リシノール酸生産の障害になっていた。

これに対してツノケイソウは、リシノール酸の水酸基に脂肪酸を新たに結合することで水酸基を無くし、新しくエストライド構造を持つ油脂(エストライドTAG)を蓄積しつつ増殖した。エストライドTAGは、容易にリシノール酸に再変換でき、それ自体に薬理活性が期待されることから、ツノケイソウはリシノール酸だけでなく、エストライドTAGの供給源としても活用できる可能性がある。