2016年11月16日
東大、被災地除染に有効なナノ材料を開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学大学院の坂田一郎教授(工学系研究科)らの研究グループは15日、水に溶けないセルロースであるプルシアンブルー複合型ナノ材料を開発したと発表した。

低線量の放射線セシウムの除去には、葛飾北斎が絵に用いた青色顔料のプルシアンブルーが有効で、これを東日本大震災被災地の汚染除去に活用できないかと考えたのが研究のきっかけだった。
プルシアンブルーは、放射線セシウムを選択的に吸着する“特効薬”として知られている。だがこの物質は水との親和性が高いため、水と結合してコロイドとなり環境へ溶出するという問題があった。

同研究グループはまず水に溶けない新しい有機・無機複合型のセルロースナノファイバーを骨格にしたプルシアンブルーの合成に成功した。さらにポリウレタン発泡プロセスを使いこの粒子をスポンジ状の吸着剤にした「除染スポンジ」を作成した。

スポンジの性能を評価したところ、セシウムに対する分配系列は10の5乗と高いことが分かった。純水・人工海水での除染効率はそれぞれ99.2%、99.9%と優れた性能を示すデータが得られた。
昨年2月から福島県内で実証実験を行い、1カ月で放射線量を初期値の半分にまで引き下げる効果が得られた。被災地の除染活動にどう生かされるか注目される。