2017年07月06日
東大、「がん転移を1細胞ごとに観察可能に」
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:東京大学

東京大学大学院の上田泰己教授(機能生物学専攻)らの研究グループは6日「組織透明化による全身全細胞の解析基盤を構築した」と発表した。これにより、がんの転移を1細胞ごとに見ることが可能になった。

がんは局所に生じた後に全身に転移する全身性疾患で、取り巻く微小環境と互いに作用し合いながら転移していくことは古くから知られていたが、転移のメカニズムについては明らかになっていない部分が多く、十分な治療法が開発されていないのが現状。がん細胞や微小環境を1個の細胞ごとに高い解像度で、しかも全身・全臓器で包括的に観察することは極めて困難だった。

上田教授らの研究グループは、すでに開発していた全身、全脳イメージングと解析技術「CUBIC」の透明化試薬を、屈折率の観点からさらに発展させ、マウス個体の全身・全臓器に存在するがん微小転移を1細胞レベルの解像度で解析することを可能にする技術を開発した。同技術を応用してがん転移の時空間的解析を行うことで、がん細胞による初期の転移巣の形成機構を解析したり、抗がん剤の治療効果を臓器や個体レベルで検証することが可能となった。

同研究成果は「Cell Reports」オンライン版(7月5日付)に掲載された。