2017年09月11日 |
九大など、ジルコニウム-93の核破砕データ取得 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:九州大学 |
九州大学大学院総合理工学研究院の渡辺幸信教授を中心とする東大、東工大など49名の共同研究グループは11日、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いて、ジルコニウム-93(93Zr、原子番号40、半減期153万年)を不安定核ビームとして取り出し、核破砕反応の基礎データを取得したと発表した。 原子力発電所などで生じる高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題はいまや世界的な課題。後の世代への負担を軽減するためにも廃棄物から有用元素を回収し資源として利用する方法や、長寿命核分裂生成物(LLFP)を取り出して、短寿命核種あるいは安定核種に核変換し、放射能を減らす方法の開発を急いでいる。 共同研究グループは、有用な元素の一つとして燃料電池などに使用されるジルコニウム(Zr)に注目した。廃棄物のZrの中から、 LLFPである93Zrを取り出すことができれば、残りのZr同位体を資源として利用できる。一方で、取り出された93Zrは、その放射能を減らすために核変換させる必要がある。 今回、93Zrを核変換させるために、陽子または重陽子を衝突させて93Zrがどのような核種にどれだけ壊れるかを調べた。その結果、153万年と非常に長い寿命の93Zrから生成された核種は、安定核種が約39%、半減期が1年以下の核種が約57%、1~30年が約0.1%、30年を超えるものが5%以下であることが明らかになった。今後、これらの実験データは核反応理論モデルの検証、シミュレーションによる核変換効率の計算や核変換のための装置設計などに反映される。 同研究成果は、オンライン科学雑誌「Progress of Theoretical and Experimental Physics」9月7日付に掲載された。 |