2018年03月13日 |
理研、数千個の1細胞からRNA量と種類を正確に計測 |
【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:理化学研究所 |
理化学研究所は12日、バイオインフォマティクス研究開発ユニットの笹川洋平上級研究員らの共同研究チームが、大量の1細胞由来RNAを網羅的、高精度かつ低コストで計測する高出力型1細胞RNAシーケンス法「Quartz-Seq2(クォーツ・セックツー)」を開発したと発表した。 人間の体は、数百種類の細胞で構成されているが、各臓器が正常に働くためには、必要な細胞を適切に供給する幹細胞が必要となる。だが臓器には幹細胞がごくわずかしか含まれていないため、多種多様な細胞集団やその機能を理解するには、一つ一つの細胞の特徴を調べる必要がある。 その方法として、1細胞ごとにRNAの種類と量を計測する「1細胞RNAシーケンス法(1細胞RNA-seq)がある。これまで、大量の1細胞からRNAの種類と量を計測する方法として高出力型1細胞シーケンス法が開発されたが、非高出力型の従来法と比べて、50~60%程度の遺伝子しか捉えられないという問題点があった。 今回、研究チームは高い検出遺伝子数と低コストを両立した、高出力型1細胞シーケンス法「Quartz-Seq2」を開発した。従来の高出力型1細胞RNAシーケンス法とコストはほぼ同じで、200~240%の遺伝子数を検出した。また同法を利用し、胚性幹細胞(ES細胞)・分化細胞の計4,500個から数個の希少細胞を検出することに成功した。さらに、間葉系幹細胞が含まれる約1,000個のマウス脂肪組織から取り出した細胞を1細胞RNAシーケンスしたところ、間葉系幹細胞には2種類の幹細胞が含まれることが分かり、それぞれの細胞機能の違いを類推することができた。 同研究は今後、細胞分化や臓器・器官発生などの基礎研究から、再生医療における移植細胞の有効性・安全性評価など、さまざまなライフサイエンス分野の研究発展に貢献すると期待される。 同研究成果は、英国の科学雑誌「Genome Biology」(3月9日付)に掲載された。 |