2018年04月04日
理研、多様な記憶キラーT細胞 形成の仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 生命医科学研究センター・組織動態研究チームの岡田峰陽チームリーダーらの国際共同研究グループは4日、病原体感染やがんの生体防御に中心的な役割を果たす記憶キラーT細胞が形成される仕組みを解明したと発表した。
研究グループは、強い抗原刺激を受けたキラーT細胞が発現するKLRG1(リンパ球に発現する細胞表面抗原)に注目し、KLRG1発現の有無と、記憶キラーT細胞への分化の関係を解析する「細胞系譜追跡法」を確立した。この手法をマウスリステリア菌やインフルエンザウィルス感染モデル、皮膚がんモデルに適用し、多様な記憶キラーT細胞がどのように形成されるかを調べた。
その結果、記憶キラーT細胞の多様性の形成には、抗原刺激の強度が重要な役割を果たしていることが分かった。特に、中程度の抗原刺激を受けたキラーT細胞は、KLRG1を一時的に発現した後に消失し、高い細胞障害活性と増殖能を持つさまざまな種類の「exKLRG1」記憶キラーT細胞へと分化することを見いだした。
同研究は、病原体やがんの排除に重要な免疫細胞集団を同定したもので、生体防御能を反映する新たなバイオマーカー検索に貢献することが期待できる。
研究の詳細は、米国科学雑誌「Immunity」掲載に先立ち、オンライン版(日本時間4月4日)で公開される。


<用語の解説>
■記憶キラーT細胞、キラーT細胞とは :
キラーT細胞は、細胞表面にCD8とT細胞受容体と呼ばれる分子を発現しているリンパ球の一種。これらを介して細胞内寄生性病原体に感染した細胞や、がん細胞を抗原特異的に認識することで活性化すると、標的細胞を殺傷する能力を持つエフェクターキラーT細胞へと分化する。