2018年06月13日
理研、ゲノム中のウイルスを抑制する仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は13日、開拓研究本部 眞貝細胞記憶研究室の眞貝洋一主任研究員らの国際共同研究チームが、ウイルスに由来するDNA配列であるレトロエレメント(注1)の抑制に関わる新しい遺伝子を発見したと発表した。

同研究成果は、遺伝子やウイルスを抑制する機構の解明に貢献すると期待できる。

哺乳動物のゲノムは約半分がレトロエレメントというウイルス由来のDNA配列で占められている。レトロエレメントの異常な発現は、近傍遺伝子の発現への影響や、転移によるゲノムの損傷を引き起こすため、その発現はエピジェネティック修飾(注2)により抑制されている。だが、その詳細は明らかにされていない。

今回、研究チームは、CRISPR-Cas9システム(注3)を用いた遺伝子ノックアウトスクリーニングにより、50以上もの新しいレトロエレメント抑制因子を同定した。そして、それらのうちMORC2AとRESF1の分子機能を解析したところ、MORC2AとRESF1はレトロエレメント抑制機構の異なる段階で働くことが分かり、レトロエレメントの抑制が確立する機構の一端が明らかになった。

同研究の成果は、国際科学雑誌「Genome Research」オンライン版(5月4日付)に掲載された。


<用語の解説>
■(注1)レトロエレメント :レトロウイルスレトロウイルスは、DNA→RNAへの転写と、RNA→DNAへの逆転写によって増殖する性質を持つRNAウイルス。レトロエレメントは、逆転写反応によりレトロウイルスが染色体に取り込まれたDNA配列をいう。
■(注2)エピジェネティック修飾 :エピゲノムエピジェネティック修飾は、DNAやヒストンタンパク質の化学修飾のこと。転写制御やDNA修復、染色体組換えなど、さまざまな生命現象に関わる。エピジェネティック修飾によって制御されるメチル化、アセチル化などの情報をエピゲノムという。
■(注3)CRISPR-Cas9システム :標的DNAを切断し、変異を導入するシステムで、標的DNAに相補的な配列を持つガイドRNA(gRNA)とDNA切断酵素のCas9で構成される。Cas9はgRNAと複合体を形成し、gRNAに相補的なゲノム領域に誘導され、その領域を切断する。