2018年06月19日
理研、光による植物遺伝子の発現制御機構を解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は19日、環境資源科学研究センター合成ゲノミクス研究グループの栗原志夫研究員らの研究チームが、光受容による植物の新たな遺伝子発現制御機構を解明したと発表した。

植物は土の中で発芽した後、地上に芽を出し、光を受容することで形態形成を始める。しかし、光受容によって起こる遺伝子発現の変動やその制御機構については、まだよく分かっていない。

今回、研究チームは、暗所で発芽したシロイヌナズナを、青色光下へ露光したときの転写開始点の位置をゲノム全域にわたって調べた。その結果、220個の遺伝子において、暗所で主要だった転写開始点の位置が下流(ゲノム上で遺伝子の読まれる方向と同じ向き)へと移行し、mORF(タンパク質をコードする領域)が読み飛ばされる現象を発見した。

つまり、暗所では主にuORFを含む遺伝子領域がメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、遺伝子発現が抑制されること、一方、青色光下への露光後は主にuORFを含まない遺伝子領域がmRNAに転写されることでuORFの抑制を免れ、遺伝子発現が促進されることが分かった。

同研究成果は今後、遺伝子発現方法の選択肢を広げ、環境に順応しやすい作物の作出につながると期待できる。

同成果は、米国の科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA」6月18日付オンライン版に掲載された。