2018年07月23日
九大、神経障害性疼痛の発症機序解明、世界初
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

九州大学大学院 医学研究院の吉良潤一教授らの研究グループは23日、神経障害性疼痛をもつ患者の血液中に、痛みを伝える感覚神経を標的として攻撃する「抗 Plexin D1 抗体」が存在することを世界で初めて発見したと発表した。

神経障害性疼痛とは、感覚神経の病気やけがによって、手足に「ぴりぴり」や「じんじん」といった痛みやシビレ感が現われる病気のこと。日本では約600万人がこの病気をもつとされるが、多くの場合疼痛の発症機序が不明で、原因に基づいた根治的な治療ができないのが現状。
今回、吉良教授らは、神経障害性疼痛を呈する患者の10%に、痛み信号を伝える感覚神経を標的とする自己抗体が血液中に存在することを見出した。この自己抗体が感覚神経を構成する Plexin D1 というタンパク質と結合し、感覚神経の損傷を引き起こすことを世界で初めて発見した。

同抗体を有する神経障害性疼痛の患者の多くは女性で、アレルギー疾患や膠原病を持ち、手足がヒリヒリするといった灼熱痛や手足が赤く腫れるなどの症状を有していた。また、基礎疾患に対して免疫治療が行われた患者は、全例で痛みが緩和した。この結果、抗 Plexin D1 抗体が神経障害性疼痛の原因の1つになっていると考えられる。今後、免疫治療を選択することで患者の痛み緩和に効果がみれる可能性がある。
同研究は、厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)を受けて行われた。

同研究成果は、アメリカ神経学会誌「Annals of Neurology」オンライン版(7月16日付)に掲載された。