2018年08月21日
兵庫県立大など「鉄分の吸収促進メカニズム」解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

兵庫県立大学大学院生命理学研究科の澤井仁美助教、理研射光科学研究センターの杉本宏専任研究員を中心とした共同研究グループは20日、大型放射光施設「SPring-8」を利用して、ヒトの鉄吸収メカニズムに関わる膜タンパク質の立体構造を世界で初めて解明したと発表した。さらにその立機能解析により、食物に含まれるビタミンCや有機酸が鉄分の吸収効率を向上させる仕組みを原子レベルで明らかにした。

同成果は、Nature Publishing Groupが発行する国際生物科学雑誌「Communications Biology」(8月17日付)に掲載された。

<発表要旨>
ヒトの体内には、釘1本分(約5g)の鉄がイオンとして存在し、様々な生体機能の調節に使われている。この鉄は、食物に含まれる鉄イオンを十二指腸の柔毛で吸収することで得られることは古くから知られていたが、詳細なメカニズムは不明だった。
研究グループは「SPring-8」を利用して、ヒトの鉄吸収メカニズムに関わる膜タンパク質の立体構造を世界で初めて解明した。
今回解明したビタミンCやクエン酸などが鉄イオンの吸収に必須の反応を促進する仕組みは、鉄分の効率的な摂取方法や鉄代謝異常による疾病への理解につながる。世界人口の約30%(20億人以上)を苦しめる鉄欠乏性貧血の予防や治療の端緒を拓く可能性がある。