2018年10月22日 |
経産省「世界の石油化学製品の需給動向」 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:経済産業省 |
経済産業省 素材産業課は19日、「世界のエチレン製品の需要は堅調に推移し、2022年には177.3百万トンと、16年比35.0百万トン増加。平均成長率は3.7%となる」とする、2009~2022年の「世界の石油化学製品の需給動向」を発表した。 まず、地域別特徴として「アジアの需要と中国の新増設動向」、「米国のシェールガス由来大型プラント」、「中東の川下産業への展開」の3つをポイントにあげ予測結果を示したた。需給バランスについては「中国では需要の伸びが生産の伸びを上回るものの、中東と米国では供給過剰拡大する」、一方、「日本国内のエチレン換算需要はほぼ横ばい、プロピレン需要は長期的には減少トレンドにある」と予測した。 「総論」要旨は以下の通り。 ■アジアの需要拡大 (1)アジアの石油化学製品需要(エチレン換算)は、2017~2022年は4.8%と、平均成長率に縮小はみられるもの の、全体としての拡大傾向は継続し、世界の総需要に占める割合は、2022年には50%を超えると予測。 (2)中国の新増設動向 中国におけるMTO、CTOの石炭化学プロジェクトの新増設は国内環境規制強化に加え、原料メタノールのコスト高、原油価格との比較優位性の低下から、従来計画見直しの影響が出ている。ナフサ分解設備は、第13次5カ年計画により、7地域への集約化と新規プラント構想が打ち出され、エチレン生産能力は2016年の22.7百万トンから、22年には31.9百万トンまで増加する見込み。この中には中国初のエタンクラッカーの建設も含まれる。 (3)インドの内需の継続的な成長 インド経済の高いGDP成長率を受け、石油化学製品需要(エチレン換算)は今後も順調に伸び、2017~2022年の年平均成長率は4.2%と予測。大幅な新設で対応するものの一部製品は引き続き輸入に頼る構造が続く。 (3)我が国の状況と見通し 我が国の石油化学産業は、堅調な内需への対応とともに、ナフサスプレッドの拡大もあり、誘導品に加えて基礎化学品も含めたアジアへの輸出が好調だったことから、エチレンプラントの高稼働が続いている。ただし、2009年~2016年と2017年~2022年の年平均成長率と比較すると、エチレン換算需要は1.1%から-0.6%へ、プロピレン換算需要は2.3%から0.4%へといずれも低下する見込み。 ■米国ではシェールガス由来の大型プラントが稼働 (1)米国経済は回復基調を鮮明にし、石化産業は需給ともに力強さを増している。エチレン換算需要の2017~2022年の年平均成長率は2.7%となり、2009年~2016年までの年平均成長率2.4%から上昇する見込み。 (2)シェールガス由来の新増設エチレンプロジェクトは、米国内の建設コスト上昇等の影響を受けるものの、ナフサに対する絶対的な価格競争力に変化はない状況。 (3)2017年から2018年中頃にかけ、シェール由来の合計3基の150万トン級エタンクラッカーが稼働を開始。国内の豊富な原料と、継続的に増大が見込まれる世界の石油化学製品需要を背景に、大型プラントには稼働の前倒しが見られることに加え、新増設計画も次々に明らかになるなど、シェールガス革命の2nd Wave、3rd Waveが今後も進む様相を見せている。 (4)シェールガス由来の石油化学製品は、現在、主に欧州向けなどが中心だが、今後、大規模出荷設備の整備が進むことで、原料のエタン、LPG、さらにエタン系誘導品等も含めた石油化学製品が、既に展開されている欧州、中南米に続き、インド等のアジア域内へも展開される見込み。その需給バランスの変化次第で、各地域の市況に影響が生じる可能性。 ■中東の川下産業への展開 (1)中東諸国の石油化学産業は、川下展開による内需の取り込み、グローバル化、高付加価値製品化へ向かう動きが加速している。石油化学製品需要の2017~2022年の年平均成長率はエチレン換算需要は4.2%、プロピレン換算需要は4.7%と予測。 しかし、新増設計画については、国際情勢の環境変化や外交バランスの要因から、実現への不透明さも抱えている。 (2)誘導品については、これまで汎用ポリエチレン、エチレングリコールが中心であったが、付加価値製品の生産も進行中。また、民間企業が参画したプロジェクトや、中東諸国の国営企業による中東域外への進出、グローバル化も進められている。 ■需給バランスのポイント (1)エチレン系誘導品(エチレン換算)の需給バランスは、中国では石炭化学プロジェクトの計画見直しや新たなナフサクラッカーの新増設計画など、増減いずれの側面もあるものの、需要の増加が生産能力の増加を上回る傾向は顕著。2016年では1600万トンの需要超過であったところ、2022年には2460万トンに拡大する見通し。 (2)中東では、イラン等での生産能力増加により、供給過剰が2016年の1778万トンから、2022年には2074万トンになる見通し。 (3)北米では、シェールガス由来の新規エチレンプラントが続々と稼働に入ることから、供給超過幅が2016年の570万トンから2022年には1114万トンに大幅に拡大する見通し。 (4)プロピレン系誘導品(プロピレン換算)の需給バランスは、中国ではPDHプロジェクト等の進行から、需要超過が、2017年の99万トンまで急速に縮小するものの、その後、再び需要が拡大し、2022年には再び310万トンまで拡大する見通し。 ■2025、2030年の予測 (1)今回新たに、2025年、2030年の世界の需要予測についても取りまとめた。(商品別集計データ表(2)参照) (2)エチレン系誘導品(エチレン換算)の需要は、2030年まで、中国、米国、インド、中東の主要地域は着実に拡大する見通しで、2020年~2030年(10年間)の年平均成長率は世界全体で3.0%程度と予測。 (3)プロピレン系誘導品(プロピレン換算)の需要についても、年平均成長率は2020年~2030年(10年間)の年平均成長率は世界全体で3.0%程度と予測。 関連ファイル http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/chemistry/downloadfiles/01_souron.pdf 国別データシート http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/chemistry/downloadfiles/02_kunibetsudatar.pdf 商品別データ表<1>(2009~2022年/各年) http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/chemistry/downloadfiles/04_shouhinbetsudata_2022.pdf 商品別データ表<2>(2010年~2030年/5年ごと) http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/chemistry/downloadfiles/05_shouhinbetsudata_2030.pdf |