2018年12月11日
理研と埼玉大「温度応答性ナノカプセル」開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所は10日、創発物性科学研究センターと埼玉大学の共同研究チームが、両親媒性ポリペプチド(親水性と疎水性を示すポリマー)とリン脂質を共集合させることで、温度に応じて内包分子を放出できるナノカプセルの開発に成功したと発表した。

この研究成果は、がん治療をはじめとするさまざまな薬剤体内輸送用カプセルや有機反応・生物反応の効率を高めるナノリアクター(ナノ空間で反応を行うシステム)への応用が期待できる。

リポソームはリン脂質二重膜の人工カプセルで、これまでさまざまな膜機能が解明されてきたが、構造的に不安定という問題があった。

今回、共同研究チームは、疎水部にαヘリックス構造を持つ両親媒性ポリペプチドとリン脂質を共集合させ、直径75ナノメートルの球状ナノカプセルを作製した。この共集合ナノカプセルは、ペプチド膜とリン脂質膜が相分離した構造をしている。そのため「構造安定性や形状均一性」といったペプチド集合体としての機能と「温度に応じて相転移を起こす」というリポソームとしての機能を併せ持っている。
実際に、相転移温度(38℃)以下でこの共集合ナノカプセルに分子を内包させ、それを38℃以上に加熱したところ、リン脂質膜のゲートから内包分子が放出されることが示された。

同研究の詳細は、米国の国際科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」掲載に先立ち、近くオンライン版に掲載される。