2019年01月07日
年頭に寄せて 井上宏司製造産業局長
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:経済産業省
井上宏司製造産業局長

我が国経済は、安倍政権発足から6年での様々な改革や金融・財政政策によって名目GDPは54兆円増加、正社員の有効求人倍率は1倍を超え、2%程度の高水準の賃上げが5年連続で実現するなど、着実に成長軌道に乗りつつあります。一方、製造業を巡る外部環境は目まぐるしく変化しています。変革する競争環境の中で勝ち残り、世界をリードしていく企業を後押ししていくためにも今こそ具体的なアクションを起こしていただければと思います。製造産業局としても貢献をしていきます。
具体的に、まずは「Connected Industries」です。このコンセプトは、将来的に目指すべき未来社会である「Society5.0」を実現していくために、データを介して、様々な繋がりが生まれることで、新たな産業や付加価値の創出、社会課題の解決につなげていくものです。AIやIoT、ロボット技術が進展し、従来の産業ごとのもの売りだけではなく、こうした技術を活用した、業種横断的なサービスとの連動が拡大しています。ビジネスモデルの創出や抜本的な生産性向上、深刻な人手不足解消などに資する取組であります。引き続き、「自動走行・モビリティサービス」、「ものづくり・ロボティクス」、「バイオ・素材」等の重点5分野を中心にデータ共有やAIを用いたデータの利活用などを推進していきます。
自動車は、重要な生活の足であるとともに、製造業の出荷額の約2割、雇用の約1割を占めているなど、経済・雇用面で幅広い波及効果を有する日本経済の牽引役であります。仮に国内の自動車市場が縮小すれば、地域の経済・雇用、ひいては日本経済全体に大きな影響が出ると予想されます。このため、自動車の保有に関する税負担の軽減などの車体課税の抜本見直しに加えて、消費税率引き上げ時の需要平準化対策として自動車の取得に関するユーザー負担の軽減いたします。また、自動車産業には、CASEと呼ばれる大変革の時代が押し寄せています。IT企業やベンチャー等が積極参入し、業種を超えた異種格闘技戦の様相を呈してきています。日本が引き続き世界のイノベーションをリードできるよう、CASEの潮流をチャンスととらえて積極的に対応してまいります。4月に「自動車新時代戦略会議」を立ち上げ、電動化を中心に中間整理をさせていただいております。
さらに、世界的に保護主義的な動きが広がる中、日本は自由貿易の旗手として主導的な役割を果たしてまいります。まず、TPP11の更なる拡大を目指します。また、2月1日に発効する日EU・EPAを含め、EPAを活用した中堅・中小企業の海外展開を積極的に支援します。RCEPについては、今年中の妥結を目指して交渉を進めていきます。また、鉄鋼の過剰生産能力は未だ世界的課題であり、貿易制限措置の応酬がなされている現状であればこそ、多国間の枠組みである鉄鋼グローバル・フォーラムで具体的な成果を出すことが必要です。日本は昨年12月から議長に就任しました。引き続き、積極的に貢献していきます。
今年10月に、消費税が10%に引き上げられます。軽減税率制度への円滑な対応をお願い申し上げます。中小企業の皆様に対してはレジ・システム補助金を用意しております。
アベノミクスの成果を全国に届けていくためには、中小企業の取引条件を改善するとともに、サプライチェーン全体で付加価値を生み出す取り組みが不可欠です。特に、自動車、素形材、建設機械・機械製造業、繊維等の関係団体におかれましては自主行動計画を策定いただいております。進捗状況のフォローアップを踏まえれば、取引適正化に向けた取組みを更に加速することが重要であると考えています。また、自主行動計画や未来志向型・型管理アクションプランの策定は、業界として前向きに取引適正化に資する取組を行っているという好事例であります。取引適正化の取組の推進に当たっては、発注側、受注側双方の理解、協力が不可欠です。この動きを更に大きなものとすべく、未策定の業界の方とともに議論を深めていきたいと考えています。
昨年は豪雨や台風、地震などによる被害が相次いで発生いたしました。被災された方々にはお見舞いを申し上げます。また、業界の皆様には被災地への物資支援、節電・逆潮の実施など多大なるご協力をいただき感謝しております。北海道胆振東部地震では大規模停電が発生したことを踏まえ、エネルギーの安定供給を推進していきます。
福島の復興は、経済産業省の最重要課題です。製造産業局としても、福島県とともに、「福島イノベーション・コースト構想」の中核となるロボットテストフィールドの整備等に取り組んでいます。ロボットテストフィールドは、試験飛行や実証実験を行える場です。来年3月に全面開所予定であり、産学官の関係者に広く活用いただきたいと思います。また、福島での企業立地や事業展開をお考えの際はご相談ください。
2025年の万博について、大阪・関西への誘致を勝ち取ることができました。政府・自治体・経済界が一体となり、オールジャパンで準備を進めてまいりますので、経済界の皆様には引き続きの御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
末筆ながら、本年の皆様の御健康と御多幸を、そして我が国製造業の着実な発展を祈念いたしまして、新年の御挨拶とさせていただきます。
平成31年元旦