2019年10月29日
理研など、硫化水素の産生過剰が統合失調症に影響
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所、日本医療研究開発機構、筑波大学、、山陽小野田市立山口東京理科大学、福島県立医科大学、東京大学の共同研究グループは28日、脳内の硫化水素の産生過剰が統合失調症の病理に関係していることを発見したと発表した。

硫化水素というシグナル分子を標的とした、統合失調症に対する新たな創薬の切り口として期待される。

今回、共同研究グループは、統合失調症に関係するマウス系統とそうではない系統で、網羅的なプロテオミクス解析を行い、硫化水素産生酵素の一つである Mpst タンパク質の上昇の関与を見いだした。また、ヒト由来の試料を用いた解析から、統合失調症での硫化水素の産生過剰を示すデータを得た。

統合失調症患者の死後脳における MPST タンパク質の高発現は、生前の臨床症状の重篤さに関連し毛髪中の MPST遺伝子の発現量は感度の優れたバイオマーカーになる可能性が示された。

さらに、持続的な硫化水素の産生過剰が生じる原因は脳発達期の炎症・酸化ストレスに対する代償反応の一環である可能性、そのメカニズムとしてエピジェネティック変化が根底にあることを明らかにした。

なお、硫化水素の産生過剰は、エネルギー代謝の減少、スパイン密度の低下などを引き起こし、それらが統合失調症のリスクにつながることも解析した。


同研究の詳細は、ヨーロッパ分子生物学機構の科学誌「EMBO Molecular Medicine」のオンライン版(日本時間10月2日)に掲載される。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2019/20191028_1/index.html