2019年11月14日
京大・東北大「血流を介した薬剤評価チップ」開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

京都大学大学院の横川隆司 教授(工学研究科)、東北大学の梨本裕司 助教(学際科学フロンティア研究所)らの研究グループは13日、九州大学、熊本大学と共同で、生体内の固形癌を模したモデル内に血管を誘導し、血流を介した栄養供給が、腫瘍モデルの成長、薬剤評価に与える影響を評価するシステムを開発したと発表した。

腫瘍組織は、その活発な活動を支えるため、周囲から血管を呼びこむことが知られている。腫瘍組織内の血管は、腫瘍のライフラインとして機能し、血管内の流れに伴う化学的、物理的な作用は、腫瘍の活動を支える腫瘍微小環境(TME)を構築する重要な要素となっている。

このような腫瘍微小環境を生体外で再現すれば、生体内の腫瘍の応答を評価可能なモデルが構築できる。

研究では、研究グループが過去に報告した、血管を誘導するマイクロ流体デバイスをベースとし、乳癌の腫瘍組織のモデルに、血流を模した流れを有する血管を構築することに成功した。

構築された血管を介して、継続的な栄養供給を行った結果、血流を有しない腫瘍モデルと比較して、有意に腫瘍面積が増加、増殖活性が促進されるとともに、細胞死のマーカーが減少した。

今後は、様々な腫瘍モデルへ本技術を展開し、新規に開発された薬剤のスクリーニングツールとして社会に貢献していくことが期待される。

本研究成果は11月8日に国際学術誌「Biomaterials」のオンライン速報版に掲載された。